第49話 闇を斬る
「
プレスがそう唱えた瞬間、木箱の上方が開き一振りの長剣が飛び出す。
プレスはその長剣の束を握った。全てが金色に光り輝く片刃の長剣。反りのある刀身は言葉にできないほどの美しさを湛えている。本来漆黒であるその瞳が金色に輝く。
「なんと!!まさかそれは…!!」
流石のグレイトドラゴンも言葉を失った。
「やっぱりグレイトドラゴンなら知っているよね…。動かないで!!」
その言葉をその場に置き去りにして、プレスは既に飛び出していた。その速度は完全に人の域を超えている。次々とドラゴンを捕縛していた漆黒の鎖に切りつける。鎖は斬りつけられたそばから光の粒子となって虚空へと消える。
「おお!」
そう感嘆の声を漏らすドラゴン。驚くほどの早業で全ての鎖が消滅させられている。プレスは巨大な漆黒の杭に狙いをつけて跳躍する。
「これで最後!」
その巨大な杭に金色の長剣を突き立てる。その瞬間、剣を突き立てた場所から瘴気とも呪いともとれる漆黒の物体が噴き出した。
「これは…。ここまでの呪い?かな…。よくこんなものを創ることが出来たものだ。だけど関係ない…。こんなもので…。こんなものでこの世に生きる我々を束縛できると思うなよ…」
プレスはさらに長剣を深く突き立てる。金色のオーラが漆黒の杭を塗り潰す。
「?」
その時、漆黒の杭が液体のように形を変えた。プレスと長剣が放つ金色のオーラを覆い隠そうとするかのようにプレスを包み込もうとする。
「む!」
プレスが気合をこめた言葉を漏らしたとき…、プレスを覆い隠そうとした闇が粉々に切り裂かれる。切り裂かれた闇は光の粒子となって霧散した。
グレイトドラゴンは言葉も出ない。一方、着地したプレスも辛そうに佇む。
「くっ…。はあっ!やっぱり…。これはきついね…」
躰を引きずる様にして木箱へと移動する。先ほどと同様に紙に魔法陣を描いて唱える。
「
長剣が木箱に収納され周囲は先ほどプレスが放ったライティングの光だけの空間に戻った。
がっくりと膝をついたプレスはマジックボックスから魔力ポーションを取り出し口に含む。
「ふぅ。上手くいった…」
満足げなプレスの一方で、自由になったグレイトドラゴンは自分の身に起きたことが信じられないのかまさに放心状態であった。
「どう?気分は!?」
そうプレスに声を掛けられてはっとして我に返る。
「そ、そなた……」
「あなたならこの力を知っていても不思議はないよね…」
「そなた
その呟きがハプスクラインのダンジョン最深部に響いた。
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