第23話 脅威との決着

天地疾走オーバードライブ解呪アンロック!」


 プレスがそう唱えた瞬間、木箱の上方が開き一振りの剣が飛び出す。プレスはこの瞬間を待っていた。できることならこの剣は人に見せたくはない。ダークリッチが魔力弾を放つ魔法ダークスフィアを中心に攻撃を組み立ててくれたのは運がよかった。冒険者達がこの戦いを目にする前に終わらせる。


 プレスは素早くその剣の束を握った。全てが金色に光り輝く片刃の剣。刃渡りは一メトルほどだろうか。反りのある刀身は言葉にできないほどの美しさを湛えている。本来漆黒であるその瞳が金色に輝いた。


「ぎぃやああああああああああああああああああああ!」


 突然、ダークリッチの絶叫が響き渡った。剣を握った瞬間これまでの数倍の速度で肉薄したプレスがダークリッチの肩口に斬撃を叩きこんだのである。必死になって間合いを外すダークリッチ。


「バカな?こ、これは痛み…?」

「久しぶりだろう?そして姿を眩ますことも既にできないだろう…」


 プレスの言葉に戸惑いながらもダークリッチは周囲に魔力が込められた光球をばら撒く。


「無駄だ!」


 プレスが金色に光り輝く剣を一振りするとその光が降り注ぎ赤紫色の光球は全て霧散した。


「なに!」


「言ったはずだ…。お前はあのドラゴンゾンビより戦いやすいと…」


 既にダークリッチの懐に飛び込んだプレスはダークリッチの首を飛ばした。瞬時に胴体は消滅する。やはり本体は頭部か…。ダークリッチは絶叫を上げる間もない。プレスは魔石があると思われる飛び上がった頭部を金色の剣で串刺しにする。光に包まれて頭部が燃え上がる。


「がああああああああああああああああああ!き、貴様!何者だ!」


 首だけになっても話すダークリッチ…往生際が悪い。


「さてね…」


 剣の光が強まる。


「うあああああああああ!こ、この輝き…。この力……。ま、まさかこれは……なぜ…きさまが…」


「うるさい!貴様には関係のないことさ…」


 プレスはダークリッチの頭部を細切れにする。


「あああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……………」


 断末魔を残してダークリッチは消滅した。


 細切れにした霧の中から王冠が一つ地面に残される。どのような原理か分からないが討伐報酬のようだ。


「ぐっ!」


 よろめくプレス。手の中では剣が光を増してゆく。


「はあ、はあ、はあ。連日のこれはさすがに……くっ……封印を…」


 苦しそうにしながらゆっくりと木箱へとたどり着つ。


 最後の力を振り絞り胸元から一枚の紙を取り出す。先ほどと同様の方法で魔法陣を書き、持っていた剣を木箱に納める。蓋を閉じ、側面に紙を押し付け唱えた。


天地創造オーバーライド封呪ロック!」


 光が消える。膝をついたプレスはなんとか懐から魔力ポーションを取り出し瓶に口を付ける。


「はあ、はあ、はあ…これがあって助かった…」


 何とか飲み干し仰向けになった。


「討伐完了…」


 統率者のいない魔物の群れがこちらに来ないことだけを祈るプレスであった。

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