第21話 激突
冒険者達は懸命に戦っていた。前衛は防衛を現在の戦線を維持。魔法使いは防衛用結界の展開、遠距離攻撃、補助と回復。各個に強力な冒険者たちは遊撃的に魔物を攻撃している。A級冒険者たちは確実に魔物を仕留めていたがやはり数が多すぎる。相手の圧力は想像以上であった。
プレスはダークリッチを見据えている。魔物の群れの後方に漆黒のローブと何やら価値のありそうな王冠を身に着け、強大な魔力を放つ異形のリッチをプレスは捉えていた。護衛だろうか二匹のオオカミ型の魔物が周囲に座っている。オオカミ型の魔物は何とかなるだろう。あとは飛び込むタイミング次第である。
ほんの少しだけ傍観していると、魔物の群れが前に進みだした。冒険者達が引き始めたのである。
声が響いてくる。頭にではない今度は直接聞くことができた。
「ほーっほっほっほっほ。口ほどにもありませんねえ。しかしこれでは私がいる意味がない…。そうですね。皆さんのために私の力を見せてあげましょう!」
そう言ったダークリッチの手に凄まじい魔力が集まる。
「や、やばいか!?」
「でかいのが来るぞー!」
フレイアの声だろうか、指示が飛ぶ。
「魔法使い!防御魔法を最大展開!!」
「「「了解です」」」
危険を感じた冒険者たちは防御の姿勢をとる。
「ご覧ください。これが私の魔法です。ダークスフィア!!」
そう言ったダークリッチの手から赤紫色の光球が放たれた。
ドッッゴオオオオオオオオオオオオオ!
光球は魔法使いたちが展開した防御魔法の結界と衝突し大爆発を起こす。凄まじい音と粉塵が舞い上がる。結界にヒビが入りそのすきまから衝撃波が冒険者達を襲う。
「ぐおおおおお!」
「耐えろ!耐えるんだ!」
冒険者達の声はまだ聞こえる。…一撃目は耐えれたようだ。しかし結界は既にボロボロだ。なりの威力である。外にいる魔物も百匹はまとめて薙ぎ払っていた。
「ほう…。この魔法に耐えますか…。やはり冒険者という者は一筋縄ではいかないものですね…」
ダークリッチの呟きが聞こえる。
「状況を知らせろ!」
フレイアの指示が聞こえる。
「今のところ全員無事だが魔法使いたちの消耗が大きい。あんなのを連発されたら持たないぞ!」
「魔物の数が厄介だ。ポーションが足りなくなる恐れがある!」
その声にフレイアは表情を歪ませた。思った以上に消耗が激しい…。このままではマズい。魔物の群れも再度迫ってきていた。
「全員!撤退戦に移る!前衛は後方に下がりながら専守防衛!魔法使いたちの回復を急げ!回復した魔法使いは再度防衛魔法を展開だ!」
「「「了解!」」」
フレイアの指示で動き出す冒険者達。そこに再度声が響いた。
「お見事です。ですので私からプレゼントです。先ほどの魔法を連続でお届けしてやりましょう!!」
後半やや怒気を孕んだダークリッチの声に冒険者たちは戦慄する。先ほどの一撃は耐えることが出来た。しかし魔法使いたちが消耗している今、あれが連続で来たら守り切れそうもない。
「おい!マズいぞ!」
「ああ!もっとデカいのが来そうだ!」
ダークリッチの両手に夥しい程の魔力が集まったその時…。
「「キャン!」」
「ぐあああああああ!」
鳴き声と叫び声がほぼ同時に上がる。
オオカミ型の魔物を一瞬で斬り捨てたプレスの長剣がダークリッチを背後から貫いたのだった。
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