第17話 脅威の正体
「ほぉーっほっほっほっほっ!」
突然、甲高い笑い声が頭に直接響いた。
「私の声が聞こえますか?この街で魔法の心得がある方には聞こえているはずなので、しばしそのままでお聞きください。先ずは自己紹介ですね。私の名前はフィルゼガノン。漆黒のフィルゼガノンと覚えて頂ければ光栄です。当然のことながら私は魔物です。ああ皆さんには種族で説明した方が分かり易いですよね。種族としての私はダークリッチなどと呼ばれることも多いようですね。以後、宜しくお願いします」
ギルド内がざわつく。
「ダークリッチだと!?伝説の魔物じゃないのか?リッチの上位種じゃなかったか?」
「バカ言うな!リッチだってSランクの魔物だぞ!」
そのギルド内の様子を聞いていたかのように声は続ける。
「おお!どうやら私のことをご存じの方もいる様子ですね。そう私はあなた方が知っているリッチの上位種です。最上位種と言った方が適切ですかね。あんな下品で脆弱な者と同列には扱ってほしくはないのですから!」
リッチはその扱う魔法から高位のアンデッドの中でも最も厄介な魔物として知られている。リッチが相手の場合、S級冒険者が複数で構成されたパーティが討伐に選ばれる。
「ちなみに私がここに来た目的は街の皆さんの魂を集める必要性に迫られたからです。つまりは街の住民の方々は全員皆殺しと言うことになりますので、宜しくお願いしたかったのですが…」
ギルド内の冒険者は街を全滅させる気だというダークリッチの言葉に青ざめている。そんなことはお構いなしに言葉は続く。
「それにしても皆さんは私が造ったブラックワイバーンを討伐したようですね。スバラシイ!素晴らしいですよ!皆さん!あの一匹でこの街の魂は全て頂けると思ったのですがね。まさか討伐されるとは…。冒険者もさるものと言わざるを得ないですなあ!」
感心しているのか、それとも馬鹿にしているのか…。ダークリッチと名乗った者は明るい調子では言葉を続けた。
「しかし、私も賢さではあなた方に負けないダークリッチ。次善の策というものを用意してございます!実はあなた方が西の村と呼んでいる付近にもう一体の魔物を用意しました。あちらこそが私の最高傑作にして最強と自負する魔物『インペリアルドラゴンゾンビ』。本来死ぬはずのないグレイトドラゴンをドラゴンゾンビにした至高の逸品です」
「「「!」」」
冒険者たちは言葉を失った。彼らもドラゴンゾンビの恐ろしさはよく知っている。それが高位の竜種の中でもその攻撃力で知られるグレイトドラゴンであった場合、その強さは計り知れない。太刀打ちできない状況である。いやそもそもカーマインの街にそこまでの戦力は最初から用意されていなかった。
ブラックワイバーンの襲撃で皆に疲労とダメージが残っている状態である彼らにゆっくりと絶望が広がっていく…。
「ほぉーっほっほっほっほっ!いやーすみません。悪戯にあなた方に希望を見せてしまったようですね。しかしブラックワイバーンを倒してしまうあなた方がいけないのですよ?こう見えても私は可愛い作品を斃され怒りに震えています。かの最高傑作に皆さんが滅ぼされる様を楽しませて頂かないと治まらないのですよ!さてと…。皆さんもご存じのようにドラゴンゾンビの移動速度は遅い。今の時間ですと西の村を蹂躙しそろそろ城門から姿が見える頃かと推察します。さあご覧になって下さい。私の知の結晶を!」
甲高い声のまま調子のいいノリで話すダークリッチ。ギルドマスターは声を荒げて檄を飛ばす。
「顔を上げろ!絶望に項垂れている場合か!儂ら冒険者がこの街を守る!」
その言葉にはっとする冒険者達。
「急いで西の城門付近から住民を避難させるのじゃ!それと斥候ができる者達はドラゴンゾンビの大きさと場所の詳細を特定せよ!動ける冒険者は戦力として参加してもらうぞ!負傷者の中で動けるものはその他の住民を避難させるのじゃ!よいか!!」
矢継ぎ早に出された指示に全員が動き出そうとしたその時…。
「おい!汚い声で喚いているアンデッドの出来損ない!」
突然、ギルドのカウンター付近から鋭い声が聞こえた。
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