第16話 新たな脅威

 カーマインの街に到着した迷わずギルドを目指す。冒西門から入るプレスの前に広がる街並みは朝日に照らされいつものように見えた。街並みを突っ切ってギルドに到着する。


「こ、これは…」


 プレスは言葉を失った。ギルド前の広場に夥しい数の負傷した冒険者達が手当てを受けている。プレスは馬を繋ぎギルド内に急いだ。


「あ!プレスさん!ご無事でしたか?」


 顔なじみの受付嬢が声をかけてくる。


「何があったんだ?」


 受付嬢が答える前に横から伸びてきた手がプレスの肩を掴もうとする。プレスはふわりと躱して相手を見た。


「確かアーバンだったね。何か用かな?」

「てめー!今まで何をしていた!?」

「何をって…。西の村に行ってきたのだけど?ここで何があった?」


 その言葉を受けてアーバンが掴みかかろうとする。


「ぎゃっ!」


 ドスン!と音を立ててアーバンはギルドの床に叩きつけられた。掴みかかろうとした手をプレスが片手で捻り上げ、腕が極まると同時に足払いでうつ伏せに床に叩きつけたのである。余りの早業に息をのんだ周囲は止めるどころか話しかけることもできない。


「いきなりそんな風に言われても訳が分からん。こっちはこっちで大変だったんだ!何があったのか言いたいことがあるなら落ち着いて説明しろ!」


「うぅぅぅ。は、離せ!離してくれ!喋る!何でも喋るから!!」


「本当だな…?」


 プレスは手を放した。


「そこまでじゃ!」


 威厳のある声が響いた。ギルドマスターである。


「マスター。何があったのかな?」


「昨夜この街の北側に巨大な魔力反応が現れたのじゃ」


「魔物かい?」


 頷くギルドマスター。カーマインの街は東、西、南、北に街道が伸びており、東西には森、南北には平原が広がっていた。


「急いで冒険者をかき集め北門に向かったところ、魔力反応の主は黒いワイバーンであった。そやつはワイバーンとは言えないほどの巨体で、それでありながら魔法も使ってきおってな。街の全戦力を集めやっとのことで討伐したのが先ほどのこと…。住民に外出禁止を伝え、今は負傷者の手当てを急いでおるところよ」


 こちらでも戦闘があったようだ。それに参加しなかったプレスを責めたいのだろう。プレスはプレスで戦闘を行ってきたのだがそれを言う前にさらなる声が響いた。


「もういいアーバン!怪我人の手当てを優先しろ」


 同じくA級冒険者というフレイアである。その言葉でアーバンはすごすごと離れてゆく。本当にフレイアの方が強いようだ。プレスは何事もなかったように受付嬢に向き直り話しかける。


「えっと…。おれも討伐…」


「ほぉーっほっほっほっほっ!」


 突然、甲高い笑い声が聞こえた。いや聞こえたのではない。その声は頭に直接響いたのだった。

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