第12話 天を貫く魔力の光

「……!」

 プレスはベッドから体を起こす。大規模な魔力の反応を感じたのだった…。


 ここはカーマインの街から西へ行った名もなき村…。人々はは西の村と呼んでいた。ギルドを飛び出したプレスは西の村へ到着し現状を村長に報告した。


 村長はC級かつたった一人で報告に戻ってきた冒険者を邪険には扱わず、集会場に住民を集めた上でカーマインの街周辺の現状を包み隠さず村民たちに説明してくれた。懐疑的な者もいたが多くは明日以降に起こるに備えて避難の準備に取り掛かってくれた。

 プレスは何かあった時のため今晩は村に宿泊したいことを村長に告げたところ、村長は快く応じ村長の自宅の一室を使わせてくれた。


 装備を解かずに仮眠をとっていたプレスは長剣と木箱を持って村長宅の外へと飛び出した。


「これは…!」

 昼間に査した森の奥から禍々しい魔力で創られた赤紫色に輝く光の柱が天へと昇っている。深夜とは思えないほど明るく照らされた上空では、その光に巻き込まれた雲が渦を巻いて動いていた。これらの現象は明らかに強大な魔物が発現したことを示していた。


「な、なんと…」

 飛び出したプレスに気づき家から出てきた村長が驚愕している。


「どうやらかなり強大な魔物が発生したみたいだ」

 村長の方を見ながらプレスは木箱を背負い、長剣を腰に装備する。その顔色に焦りや恐怖は微塵も見られない。

「どうされるおつもりですか!これはあなた一人で何とかできるような事態ではないと思いますが?」


 プレスは夜空に突き刺さる赤紫色に輝く光の柱を指す。

「村長。あの光を見てください。さっきからほとんど動いていない。おそらく移動速度はそれほどでもない魔物だと思います。まだ時間はあります。住民には避難の準備を急がせてください。おれが行って足止めします。十分あれば接敵できますのでもし十五分後に光がこちらに向かうようでしたら逃げてください。明後日の方向に移動した場合は待機です」

「直ちに逃げなくてよいのですか!?」

「避難とはこれまで築き上げた人生を放棄することです。この村の人たちにそんなことはさせたくない…。十五分でいいです。おれに賭けてみて下さい」

 そう言ったプレスは夜の森に飛び込んで行く。村長は住民を集めるため集会場へと向かった。


 森の中を疾走するプレス。昼間と同様、魔物や動物は一匹もいない。光の柱の位置はすぐに分かった。どんどん濃くなる禍々しい魔力を浴びながらついにプレスはその魔物と相対することになる。


「グルルルルルルルルル……。ガアアアアアアアアアア!」

 凄まじい雄叫びを上げたのはドラゴンゾンビであった。

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