第8話 ゴブリン討伐の依頼
翌日、朝食を食べ終え、用意を整えたプレスはここ数日と同じようにギルドへと向かった。今日もカーマインの街は晴天である。いつもと違うのは今日のプレスは腰に長剣を差し、あの木箱を担いでいた。
ギルドへと到着したプレスはホールに据えてある掲示板を見る。カーマインの街から少し西にある村からの依頼に目を止めた。村近くの森に現れたゴブリンの討伐依頼である。
ゴブリンは背の丈一.五メトル程で醜悪な容姿をした二足歩行の魔物である。小さい個体一匹なら一般人数人でも討伐可能であるが、腕力はそこそこ強くある程度の群れで行動することが知られており、群れの討伐は冒険者に依頼された。
群れの討伐自体は慣れてきたE級冒険者やD級冒険者用のありふれた依頼ではある。しかしゴブリンはあまり放置すると集落を形成し、その集落からは強さや大きさが規格外の特殊個体が発生する場合が知られていた。こうなるとB級上位以上の冒険者でなくては手が出せなくなるので迅速な対応が求められる依頼でもあった。
プレスは依頼表を取り、受付へと向かう。
「おはようございます。プレスさん。ご依頼を受けますか?」
いつもの受付嬢が声をかけてくれた。
「ああ。この依頼をお願いする」
冒険者証と依頼表を受け取った受付嬢は少し驚いたようだ。
「プレスさんも討伐依頼を受けられるんですね?」
「ちょっと興味があってね。ついでに薬草も獲ってくる予定だよ」
「畏まりました。はい。C級冒険者証を確認しました。西の村でのゴブリン討伐依頼、宜しくお願いします。それと薬草はいくらあっても大丈夫ですのでこちらもお願いします。プレスさんの薬草は本当に評価が高いですから」
薬草などの採取はギルドが恒久的なものとして依頼を出していた。そのまま使用するほかに魔法薬である各種ポーションの材料としても使用されている。ポーションは高価ではあるが効果が大きいため上級の冒険者や騎士団では愛用されていた。
「褒められるとうれしいよ」
プレスはまんざらでもなさそうであった。
「それとプレスさん。討伐依頼を受けられてのですからポーションはお持ちですか?見たところ軽装ですけど…。その木箱の中ですか?」
「今は持ち合わせがないよ。大丈夫。ゴブリンくらいに引けは取らないさ」
簡単に答えるプレス。このことに関して受付嬢は反論できなかった。この街のA級ハンターを事も無げに投げ飛ばしたこの冒険者は相当強いはずなのである。
「お強いのは分かっていますが気を付けて下さいね。となるとその木箱は何ですか…?あ、すみません、聞いちゃいけないことでした?」
「そんなにいけないことはないけど…。ちょっとした道具が入っているんだ。中身は冒険者の秘密ってやつさ」
冒険者は命懸けの家業である。生き残るために奥の手を隠す冒険者は少なくなかった。
「畏まりました。申し訳ありません」
「気にしないよ。それじゃ!行ってきます」
「お気を付けて」
そんなやり取りをしたプレスはギルドを後にするのだった。
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