第5話 冒険者ギルド
夕陽が街を包み込む。
冒険者ギルドがすぐに見つかった。石造りの大きく重厚な建物だ。剣と薬草があしらわれたギルドの紋章が目を引く。曰く、剣が討伐依頼と護衛依頼、薬草が採集依頼を表しているんだとか…。
この時刻、依頼の報告と報酬の受け取りだろう。多くの冒険者が出入りしていた。
プレスもエリーを伴い建物に入る。入ると先ず広いホールがある。ここは共有部分としてパーティの募集や冒険者同士の情報収集の場とされている。
ホールの左手に依頼が貼り出される掲示板、さらに左手その奥には個別打ち合わせ用の消音魔法を付与されたブースがいくつか造られているようだ。
ホール右手の手前には資料室と書かれたドアがある。ギルドで管理している近隣の情報を集めた書籍があるのだろう。右手の奥には階段がある。ギルド職員の事務室やマスタールームなどは二階以上にあるようだ。
ホールの奥、カウンターに複数のブースに分かれているが、向かって左側が依頼の受付。右側が依頼完了と報酬受け取りのカウンターらしい。
プレス達は右側のカウンターの列に並んだ。程なくして順番が回ってくる。
「いらっしゃいませ。依頼の報告でよろしいすか?」
金髪でブラウンの瞳を持つ可愛らしい女性が対応してくれる。
「ああ。おれは旅をしてる冒険者だが、実は東の森で盗賊に遭遇してね…。なんとか全員斃せたのだけど…。それできっと討伐の依頼が出てると思って来たんだ」
受け付けの女性は怪訝な表情を浮かべる。
「東の森の盗賊ですか?あの辺りで盗賊の情報はなかったと思うのですが…何か証明する物をお持ちですか?」
「盗賊団の名前は分からなかった。ただこれを持ってきたよ。一番価値がありそうだったからね」
そう言って『破邪の首飾り』をカウンターに置く。受付嬢の目が見開かれる。五秒は固まっていた。
「そ、そ、そ、それは『破邪の首飾り』じゃないですか!?」
声を張り上げる。
「やっぱり有名だった?」
こともなげに話すプレス。受付嬢は目眩を覚えたらしい。
「ということは盗賊団は『黒い狼』!?」
「さっきも言ったように盗賊団の名前はわからなかった」
困り顔を見せるプレス。
「『盗賊団黒い狼の討伐と国宝破邪の首飾りの奪還』はエルニサエル公国大公様からのS級冒険者相当依頼です。この十五年間誰も完了できなかった依頼でした!!」
もはや絶叫に近い…。
「そんな大事だったか…。まあ仕方ない。手続きを進めてくれないかな?」
そう言ってみたものの、そんなに簡単には行かないだろうことはプレスも分かっていた。
「申し訳ありません。依頼が大公様からの直接依頼のため確認に時間を頂きたいと思います。こちらの首飾りもお預かりすることになりますが…」
仕方がないと言った表情のプレス。
「それで構わないよ。だけど一つ頼みがある」
「なんでしょうか?」
「こちらの女性、エリーの保護をお願いしたい。その盗賊団に囚われていたんだ。おれよりも森に詳しい。拠点への案内等は彼女がしてくれるはずだ。その代わり手厚い保護をお願いしたい」
これはプレスがギルドに到着する前にエリーと決めていた内容である。恐らく簡単には手続きが進まない。被害者としてギルドに協力しその後の生活基盤の構築に利用した方が良いと。
「畏まりました。エリーさん。この後、お話を聞かせてください」
「ええ。問題ないわ」
エリーの答えを聞いて頷いた受付嬢はプレスに視線を移す。
「あなたにも当分はこの街に滞在して頂きたいのですが…」
「ああ。当分はこの街にいるよ」
「では冒険者証をお願いします」
プレスは赤い帯の入った一枚のカードを渡す。冒険者証は冒険者の身分を示す。カードにはS級が金、A級が銀、B級が青、C級が赤、D級が茶、E級が無色の帯が入っていた。
「え!?C級ですか!?」
受付嬢の驚きは留まるところを知らなかった。
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