第3話 旅の冒険者

 のんびりとした声と共に現れたのは先ほどの冒険者風の男であった。


「てめえ!いつから…いやどうやってここが分かった?」

 ゴートが喚いた。

「いやーいつからと言っても…。えーっとあなたがエリーを殴って地面に倒した時から?かな?」

「何ぃ?」

 ゴートを無視してプレスはエリーに視線を向ける。

「エリー。ごめん。君とお頭さんの話も聞いちゃったそれでどうする?お頭さんの言いつけを守って足を洗う?」

 エリーは混乱していた。この男はあの時逃げたように見せてずっとこちらを伺っていたと言う。そしてこの状況でも緊張しているようには見えなかった。なんとか言葉を絞り出す。

「あんた一体なんなの?」


 男は優しい笑みを浮かべていた。その問いに答える。

「自己紹介をしなかったっけ?おれはプレストン。

プレスと呼んでくれ。C級の冒険者をしながら旅をしている者だ」


 ゴートが笑う。

「けっ!大した冒険者かと思えばC級かよ!でしゃばるなよ若僧!こっちは取り込み中だ!」

 プレスは無視してエリーに話しかける。

「エリー。君はどうしたいんだ?このままではお頭さんは殺される。足を洗って街に下りるか、盗賊の情婦紛いの人生を送るか…」

「無視すんじゃねー!」

 斬りかかってきたゴートをふわりと躱しざま木の上まで飛び上がる。人の動きとは思えなかった。


 優しい笑みを浮かべながらプレスはエリーに話しかけた。

「ふー。あまり直契での依頼は受けたくないけど、ここまで踏み込んでしまったからね。エリー!金貨一枚でお頭さんの命と君の自由を保証しよう。依頼するかい?」


 エリーは訳がわからなかった。この男にそれだけの力があるのか…。本当に自分達を助けてくれるのか…。だが気がつくと叫んでいた。あの笑顔に導かれるように…。

「私たちを助けて下さい!」


「契約成立…」

 そうプレスが呟いた瞬間、プレスの体が宙を舞う。凄まじい速度で着地した。盗賊が二人崩れ落ちる。いつの間に抜かれたのだろうか?プレスの手には長剣が握られていた。


 盗賊達が襲い掛かるがプレスに彼らの攻撃は届かない。ふわりふわりと躱されるごとに斬りかかった者達が地面に斃れる。彼らは既に絶命していた。


「あとはあなただけかな?」

 そう言ってゴートに剣を向けるプレス。ゴートは青ざめた顔で立ち尽くす。

「くそっ!てめえは人か?一体何者だ?」

「言わなかったっけ?C級の冒険者をしながら旅をしている者だ」

「C級冒険者にこんな真似ができるものか!」

「そんなこと言われても…」

 困り顔をするプレス。そんな顔をしながらもゴートとの距離を詰める。

「くそっ!化物が!」

 そう言って斬りかかるゴート。苦もなく斬撃を躱したプレスがゴートの頸筋にぴゅっと長剣を振り抜いた。そのままゴートは動かなくなる。


「これで依頼は完了かな?」

 二人に向き直ったプレスにはあの優しい笑顔があった。



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