君の冷えた手を

チタン

第1話

 君と二人並んで歩く。

 君は両手に息を吐いて、両手を擦ってる。

 もう冬だね、雪でも降りそうな天気だ。


 向こうから学生のカップルが歩いてくる。腕を組んで楽しそうに笑いあってる。僕らとすれ違って街の方へ歩いていく。


'わたしたちもあんな頃があったね'


 君がそう言った。

 君はぼくと付き合い始めた、あの初々しい頃を思い出している。


'けど、今じゃ、あなたにときめあたりすることもなくなっちゃったわ'


 そう言って笑う君に、ぼくは反論したい気分。

 でもそうだね。この頃は落ち着いちゃって手を繋いだりもしなくなった。


'好きよ、あなたのこと'


 ヤキモキしてるぼくに君は言った。

 ああ、なんだか悔しい。ぼくが先に言いたかったな。

 けどまあいいか、だってそんなことどうでもいいくらい嬉しくって今にもスキップしちゃいそうだ。

 まあ君の隣ではしないけどね。


 ぼくの様子を見て君はなんだか嬉しそう。

 ああ、ぼくは君をときめかせることは出来ないけど、それでもずっも一緒にいたいんだ。

 君も同じだろうか?


 それとも心乱される恋をしたいかな?

 そうだったらどうしよう?


 ぼくが自信なさげだと、君はいつも決まって、


'考えすぎよ' 


と言って笑う。


 けどね、そんなこと言ったって、時々心配になるんだ、君とずっと一緒にいたいから。


 ぼくに何ができるだろうね。しばらく歩きながら考えてたんだ。


 君はそんなこと知らずに、また手を擦り合わせてる。


 ぼくは君の手を握ってみた。


'なあに?'


 君はちょっと驚いたみたいだ。


'君が寒そうだったから'


 ぼくの答えに君は笑った。


 そして君はぼくの手を強く握り返した。

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君の冷えた手を チタン @buntaito

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