Ⅴ ネイバーズ2
「ユキさんのギターは、ほかの人とはまるで違ってて、ちょっとクネクネした感じだったの」
「スネーク」
「そんな感じ」
「ハービー・マンデル」
「ブルースだよね」
「キャンドヒートにもいた。少しだけだけど」
「サイケなブルース」
「フュージョンぽかったりもした」
イタチとユウちゃんは、彼女たちにしかわからない話を楽器を弾きながら話している。
リズムを刻み始めたイタチがこっちを見て目配せしている。
何となくではあるけれど、ドラムスのイスに座ってしまっている。しかも、しっかりスティックまで持って。
「叩いたことあるんですか」
こっちを覗きながら、イタチが言った。
「ないよ」
ユウちゃんがガン見している。思わず視線から逃げた。
「熱いっすね」
イタチがニヤリと笑う。
熱を帯びてきたことは、十分に分かった。
ユウちゃんのベースが唸りを上げる。
イタチのギターが煽るように、轟音でリズムを刻む。
引っ張られないように、耳を澄ませてリズムを探る。
イタチのギターが音を引き延ばすように、ブルースを奏でる。
ユウちゃんのベースが、イタチを突き動かす。
つられて熱くならないように正確にビートを刻むと、
イタチのギターは天空を舞い上がるように、
しなやかに羽ばたいた。
突然、ユウちゃんのベースが止まる。
リズムをが疾走し、ギターが昇天する。
一瞬の沈黙の後に、ベースが弾けてリズムを扇動する。
「ユウタさん、あなたを知っています」
ユウちゃんがポツリと言う。
「ユキさんが降臨した」
イタチが興奮気味に叫ぶ。
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