Ⅳ N4
「けっこう叩けますね」
「見様見真似だけど」
偶然ポンチョに街で会うと、
地下のスタジオに連れ込まれた。
「ベースだったんだね」
「そうです」
「ギターかと思った」
「あたしのベース、ショートスケールなので」
「へえー」
「ギタリストはそのうち来ますよ」
ポンチョはそう言って笑う。
「ひとり?」
ポンチョが大きな目で見つめている。
「ひとりですが」
「かわいい子ですよ」
「別に、それはいいんだけど」
実際にギターを持って現れたのは、
本当にかわいい子だった。
体も小さいという意味でも。
「だから言ったじゃないですか、かわいい子だって」
ただ、彼女の弾くギターは、
すさまじく攻撃的な印象がした。
「可愛くて狂暴、だからイタチなんです」
ギターの女の子はにっこり笑って、
「イタチです」と言った。
「ポンチョはポンチョでいいの」
「大丈夫です」
「ユウタさんも男の人の中では小さい方ですよね」
「悪かったな」
「いや、ぜんぜん悪くないです」
イタチが気遣うように両手を前に出して、
手のひらを小さく振る。
「むしろその方が」
「あたしたちの名前、スモール・ピックスですから」
「ポンチョのPとイタチのI」
「そして、クックのCK。それでPICK」
「なるほどね」
「だから、今日からユウタさんはクックです」
「ちょっと待てよ、それは前任者の名前だろう」
「いいんですよ、問題ありません」
「いや、問題あるだろう」
「イタチはナイト・スウィーパーズ、詳しいんだよね」
ポンチョが話をそらした。
「まあ、正確に言うと、初代スウィーパーズですが」
「オルガンが入る前の」
「違います、今のスウィーパーズは二代目ですから」
「メンバーが被ってるのは、ユウちゃんだけで」
「ベースの子です」
「そう言われてもなあ」
「遠目には、みんな同じに見えますからね」
「初代は違いますよ」
「特に伝説のユキさんは」
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