Ⅳ N1

ナイト・スウィーパーズが横一列に並んで

夜の街を歩いている。

見失うはずはない。

そう思ったとき、

彼女たちは、一瞬で煙のように消えた。

早足で、消えた場所に急ぐ。

あたりを見ても、誰もいない。

微かな笑い声に振り返る。

「久しぶりね」

帽子にマントを着た女の子が微笑む。

「覚えてる」

「覚えてるよ。やっと会えた」

そうは言ったものの、確信はない。

彼女の顔はよく見ていないのだから。

そう思いながら、路地の奥へ歩いて行く彼女を追った。

急に彼女が振り返り、ぶつかりそうになる。

たしかに。

彼女は、ナイト・スウィーパーズではない。

マントも帽子も違っている。

細かい幾何学模様が微かに浮き出て、

夜の街の光を反射している。

「君はNなのか」

「誰に聞いたの」

「ダボダボのコートの刑事」

「あいつに会ったんだ」

「知ってるの」

「腐れ縁だよ」

「スリだって聞いたけど」

「婆ちゃんに頼まれてさ」

「でも、この格好だからね、スリは仕事にならなかった」

「捕まったのはしょぼい窃盗のほう」

「小学校の頃の話だよ」

「小学校の頃からその格好なの」

「婆ちゃんが好きでさ」

「お婆ちゃん子なんだ」

「なんかね、あたしだけ」

「姉貴とか、妹は相手にもしなかったのに」

「Nって本名なの」

「そんなわけないじゃん」

「Nは警察がつけた名前、記号みたいなもんだよ」

「そうか」

「実際使ってたのは、あのおっさんだけだけど」

Nがこっちを見て笑う。

「あんたとは、もう少し早く会いたかった」

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