Ⅲ ナイト・スウィーパーズ3

「ナイト・スウィーパーズ」

「知ってるよ」

ポンチョは笑いながら答えた。

最近ポンチョは、マギーの家に入り浸っている。

「でも、エルキーはナイト・スウィーパーズじゃないよ」

「知ってる、この前確かめたから」

「ライブ行ったの」

「たまたま見かけて」

「最高だったでしょう」

ポンチョの食い入るような視線。

「うん、まあ」

「だめだなあ。ねえ、メイちゃん」

ポンチョがマギーを抱きよせる。

「それが、よくわからなくて。感覚では覚えてる気がするんだけど」

「このお兄さん、だめだねえメイちゃん」

マギーがキャッキャ笑っている。

「エルキーがいないって、見ただけでわかったの」

「いや、自分で確かめたわけじゃないんだ」

「エルキーがいないって教えてくれた人がいて」

ポンチョとマギーがこっちを見ている。

「ライブ見に来てた人」

「そう」

納得したように、首をゆっくり縦に振るポンチョとマギー。

マギーがこっちを向いて微笑む。

暗かったせいだろうか、

ナイト・スウィーパーズのメンバーは、

みんな同じ顔に見えた。

メイクをしているのかさえ、よくわからない。

冷たい視線を浴びたわけではないけれど、

彼女たちは一言も発せず、店の奥に消えていった。

「あなた、気に入られたみたいね」

ライブの後、ラム・コークの女の子が

ナイト・スウィーパーズに会わせてくれた。

「そうなの」

「みんな、あなたに頭下げたでしょう」

下げたというより首をコックリしただけ、だけど。

「アイアン・バタフライって言ったのか」

ポンチョとマギーの後ろから、

しわくちゃの人形が顔を出した。

ポンチョとマギーが振り返る。

「おばあちゃん」

マギーが人形に抱きついた。

「アイアン・バタフライというよりキャプテン・ビヨンドだ」

「えっ」

「ナイト・スウィーパーズだよ」

「よくわかりません」

「まあいい。エルキーと一緒だったんだな」

「アイアン・バタフライって言ったなら間違いない」

「違うでしょう、胸大きかったし」

婆さんはにっこり笑って、こっちを見ている。

「エルキーは胸がでかいぞ。ダイナマイトだ」

「ダイナマイト」

マギーが大声で叫ぶ。

「ダイナマイト」

ポンチョもそう叫んで、マギーと二人でこっちを見た。

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