Ⅲ ナイト・スウィーパーズ1

帽子にマントを羽織った女の子の集団が、

地下に潜っていく。

そう言えば、家出した女の子も、

バンド仲間の家を転々としていたらしい。

マギーに手を引かれて、

コンビニの前を通り過ぎようとすると、

誰かがマギーに声をかけた。

「メイちゃんだ、マギーメイちゃん」

マギーは微笑みながら、

「お姉ちゃんの友だち」と言った。

「こんにちは」

女の子がにっこりと笑って、

マギーに顔を近づける。

その後、女の子に上目遣いで顔を見られる。

見覚えのある顔。

間違いなく家出少女だった。

「エルキーの友達なの」

「エルキー知ってるの」

「会ったことはないけど」

「なにそれ」

「そこのコンビの男は知ってる」

「あいつ、あたしのストーカー」

家出少女は、店の外から男の顔を見ている。

「こんなとこで、バイトしてるんだ」

「近づかないようにしないと」

「お家に帰らないと」

マギーが家出少女に言う。

家出少女は、着ていたポンチョをたくし上げ、

マギーに手を振った。

「メイちゃん、そうするよ」

家出少女が遠ざかっていく。

地下に降りると、

受付のようなところがあって、

スタッフの若い女性に声をかけられる。

「どのバンドですか」

「どのバンドって」

「取り置きですよね、お名前を」

スタッフの女性は、名前が羅列されているメモを見ている。

「いや、別に帽子とマントを追ってきただけで」

「ナイト・スウィーパーですね。それじゃ、お名前をお願いします」

「いや、彼女たちとは知り合いでもなんでもなくて」

「取り置き扱いにした方が、あの子たちも喜びますから」

仕方なく、名前を告げ入場料を払った。

重い扉を開けて中に入る。

バンドが演奏していた。

彼女たちではない。

最前列に何人かいる他は、人はまばら。

奥の丸テーブルの所に立っている女の子がこっちを見ている。

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