Ⅱ ポンチョ4

ポテチの小袋を覗き込んでいるマギー。

沈み込むようにソファーに座り、

窓から差し込む夕日が、

マギーをオレンジ色に染める。

「もうなくなっちゃった」

マギーがじっとこっちを見ている。

「ジュースでいいのかな」

「部屋はあったかいし、いいんじゃないか」

ノムさんの発した言葉に同意できない。

ジュースでいいではなく、部屋が暖かいということのほうに。

ノムさんはマギーのグラスに、ジュースを注ぎ足す。

注がれたグラスを両手で持って、

ジュースを飲むマギー。

「もう何回も行ってるけど、婆さんと姉さんには会ったことがないんです」

ノムさんは聞き流すように

ストーブに置いてあるやかんを持ち上げる。

「熱いなあ」

そりゃそうだよ。

「ねえ、お姉ちゃんはいつ帰ってくるの」

「昨日帰ってきた」

「えっ」

「今はお家で寝てるよ」

「へえ、そうなんだ」

ノムさんが盆にのせた茶碗を運んでくる。

「行くのかい」

「行きたいですね」

「その前に、熱いところ飲んでいけよ」

茶碗の中の湯気の立つお茶。

ゆっくりと両手で茶碗をすくいあげる。

「あわてるなよ」

「わかってます」

そう言って、お茶を啜る。

手を近づける、マギー。

「熱いからダメだよ」

「それに苦いし」

茶碗をマギーから遠ざける。

不満そうな、マギーの顔。

「飲ませてやりなよ」

「そしたら、二度と手を出さないから」

「やけどしちゃうよ」

「そんな熱くないだろう」

「ところで、コウさんの捜しもんは見つかったのかい」

「見つけたよ、マギーと一緒に。ポンチョを着た女の子」

「ポンチョ」

「そう、ポンチョ」

「クリント・イーストウッドみたいに」

「それは知らない」

「本当かよ」

マギーがしかめっ面で抱きついてくる。

ノムさんがテーブルに置いたお茶を飲んだようだ。

「苦かった?ここのお茶は特別苦いんだ」

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