Ⅱ ポンチョ3
やたらタイトな服を着た女性にすり寄られて
手がお尻に触れてしまう。
「すみません」
「別にいいから、声を出さないで」
「そっちの方が困るから」
マリさんに眼鏡の奥からにらまれる。
そう言えば、この辺はあの爺さんたちの家の近くだ。
「あの男だよ、よく覚えて」
普通の学生風のぼんやりとした男。
ジーンズに青い薄手のパーカーをかぶり、
髪の毛は長くも短くもない。
「その辺の兄ちゃんですね」
「あんたもね」
「良く見張っといて」
「尾行するんですか」
「しなくていいよ。あいつは引きこもりニートだから」
マリさんは尻に触れていた手を払うように、こっちを向いた。
「その先のコンビニで、これからバイトだよ」
ニートなのにバイトって。
マリさんがこっちを見てニヤリと微笑む。
「そこだけ見張ってればいいから。あたしは別の男のところに行く」
「わかりました」
余計なことは考えないようにした。
「家出娘を捜す依頼があってね」
コウさんはにこやかにこっちを見ている。
「マリがもう一人誰かいないかって」
「マリさんですか」
「一緒に仕事したことあった」
「ないです。ここでお会いしただけで」
「フーゾク関連ですか」
「まあ、そっちはマリのほうでやるから」
「それともそっちの方が良かった」
「いいえ、別に」
「まあ、その辺もマリに面倒見てもらっていいから」
「そのへんにしてあげて」
フミ姉さんが、コウさんに言う。
男を追って、ゆっくりコンビニのほうへ移動していると、
誰かに手を掴まれた。
「何してるの」
あの幼女だった。
「マギーちゃんだっけ」
「お姉ちゃんに会いたいの」
「いるの」
「ずっといないの」
幼女はそう言いながら、コンビニの入口を見ている。
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