Ⅱ ポンチョ2
刑事の後を追いかけていく。
男はうるさそうに追い払うしぐさを見せた。
「Nって言いましたよね」
「言ったけど」
男は振り向かずに答える。
「エルキーって子じゃないんですか」
「そうかもしれん」
「それじゃ何でNなんですか」
「そんなこと知らんよ」
男は急に足を止めて振り返った。
「婆さんは見つけたのか」
「見つけたっていうより、家に連れていかれました」
「それで、婆さんには会ったのか」
「そういえば会ってない」
男は葉巻に火をつけて、ニヤリと笑う。
「そういうことだ」
手を振って、離れていく男。
騙されたってことなのか。
地面を蹴って、男とは反対の方向に歩き出す。
やかんがピーピー鳴っている。
「外で待ってるのは寒かったろう」
「まあ」
「パチンコでもやってたんですか」
「間違った先入観に囚われちゃいけない」
「俺はそもそもギャンブルはやらないんだ」
「紙ぶくろ、持ってたじゃないですか。景品かと」
「完全にイカレてるな」
「パチンコ屋の景品は紙袋に入ってるんですよ」
「いつの時代の話だ」
ノムさんは、半分フタの開いているカップ麺に、
やかんのお湯を注ぐ。
「カレーにするか」
「どうしようかな、それカレーでもうどんじゃないですか」
「贅沢言うなよ。飯を奢ってやるんだぞ」
「カレーでいいです」
「それじゃ、俺はてんぷらそばか」
「少し待て。俺より先に食うなよ」
「どうして」
「そっちはうどんだからな」
お互いのカップ麺を持って、
くたびれた応接セットのテーブルまで運ぶ。
そして、定位置のソファーに座る。
「窓際が好きだな」
「並んで座るのも」
「正解だ。気の合う奴と並んで座るのもいい」
ノムさんは、フタをはがしてそばをすすりはじめた。
そしてこっちを見る。まだか。
「ノムさんは、その刑事知ってるんですか」
「良く知ってるわけじゃないが」
「嘘は言わないですか」
「嘘は言わなくても、からかうことはある」
「騙されたか、からかわれたか」
「どっちにしろ、軽く見られたな」
「婆さんのことは」
「知ってるよ」
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