Ⅰ 帽子とマント4

歩道の車道側に設けられた鉄柵に腰を預けて、

通り過ぎる人を眺めている。

歩道の向こうにはコンビニがあり、

ひっきりなしに、人が出入りしている。

これで三日目の夜。

マントに帽子をかぶった女の子には

めぐり合えていない。

そもそも、あんな目立つ格好をした女の子が、

スリなどをするのだろうか。

そう思いながら、タコスにかじりつく。

もしそうだとするなら、凄腕のはずじゃないか。

「あの人は信用できるよ」

トルティーヤ・チップスをかじって、

コロナを一口飲んだ時、マスターがポツリと言った。

「婆さんのことは知ってる」

「さあ」

そう言って、マスターが離れていく。

「ねえ、家に来ない」

女の子が声をかけてくる。

新手の商売か。どう見ても未成年というより幼女じゃないか。

「おにいさん、変なこと考えてるでしょう」

「考えてないよ」

いまどき、幼女なんてヤバすぎる。

高校の時、バイトで行った工場のおじさんを思い出す。

うれしそうに、出張の時の話をしていた。

「娘より、若かったんだぜ」

今だったら通報されちゃうよなあ。

今なら、誰もそんなバカな事、人前では言わないけれど。

女の子に手をつかまれ、強引に店の外に連れていかれた。

店の外には、太って髭を生やした、

日雇い作業員風の男が立っている。

「おじいちゃん、この人でいいんだよね」

男はゆっくりと舐めまわすように見ている。

そして、にっこり笑って、女の子の手を取った。

「こいつだ、間違いない」

男はそう言って、ついてくるよう顎で合図する。

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