第28話
リュヒルは焦りを感じていた。今回、全力を出す化け物が二人もいるのだから。それに加えて自分よりも確実に上と呼んだ一人もいる。それを数えたら計三人のダークホースが存在するのである。
慌てずにいられるはずがない。
そんな苦渋にまみれた感情を押し殺し此度の対戦相手を見据える。
「Aランクスキル『槍術師』二年我らが風紀委員長リュヒルVSAランクスキル『札術師』三年神宮」
同じAランクスキルであるがスキル昇華はしていない。だが格下と罵るには実力は拮抗している。札術とはいわゆるお札を用いた魔術戦を得意とするスキルだ。札術師の札に関しては無制限に使っていいお墨付き。ここが装備枠のズルいところである。やはり自分はまだまだ未熟者と噛み締めながらも敵を見据える。敵がオールラウンダー型の後衛ならばこちらは一点突破の前衛。やることはただ一つ一撃で決めるのみ。かの『槍使い』持ちのようにスキルの差を鍛錬と知恵で知事める必要もない。もっともこちらは鍛錬や勉強は人一倍行っているつもりだったのだが彼には足りなかったようだ。だからたった一つの槍術を窮めることにした。
「それでは開始!!」
「疾ッ!!!!」
槍の基本中の基本、突くこと。
その槍術は螺旋突き、そう呼ばれた。
札術の結界を易々と突き刺し徐々に入りだした亀裂を後押しするように槍の凸上の穂先が段々と迫り一気に破壊する。
パリッ
という爽快な音共に割れこむ結界の音。そして一つの槍術といった実質二つの錬磨が必要だった。もう一つの術が炸裂する。
その答えは至極単純。
突いたことで伸び切った腕を戻すこと。これが実は実践において最も必要なことであったりする。秘剣燕返し、かの有名な剣客の技だがこれもまた一度抜いてしまった腕から攻撃を行うために編み出した技である。
ならば秘剣燕返しの勝るとも劣らずの攻撃を出すよりも早く戻して早く最良の突き突けたら。それは最強の一撃に他ならない。
そして現在、その一撃が放たれた。
試合は終わった。
「「「Waaaaaaaaaaa!!!!!」」」
このランキング戦ではでは著名ランカーたちで金持ちたちが賭けに使っている。その観客たちが騒いだのだ。
だがリュヒルは物足りなかった。今回のダークホースとなりうる存在達は自分よりもはるかに格上でこの程度の芸当ならすぐにやって見せるであろう人物たちなのだから。だから自分はこっそり入れた。自分の主人に。学園長もこれに関してはリュヒルとの闘い以外での賭博は認めるらしい。だからこそこの観客たちが主人を見た時のことを考えると不思議と笑みがこぼれた。
「姫若子の蹂躙劇に酔いしれないといいけれど。」
その声は観客の叫びにかき消された。
スキル『槍使い』の姫若子〜平凡スキルだけど無双してくるわ〜 スライム道 @pemupemus
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます