第25話

「何者でも良いだろうに。」


「そうは行かないわね。私は学園を守「次にそのセリフを吐いたら貴方、死ぬわよ。」……失言だったわ。」


学園長は全身を槍で貫かれたような冷たい殺気を感じ今目の前にいる存在が魔眼師であるマスターと同じかそれ以上の存在であることを理解した。


「貴方、学園を守った試しなんて無いでしょう。」


男の姿なのにどこか女を錯覚させる妖艶な目付き、それは獲物を狩るメスライオンのように獰猛で行き場を失った一匹狼のように慎重で辛抱強く獲物が弱るのを待つ。野生のハンター。


「ハア~本当にこの人は成長しないみたいだね。いや、性格は大事な個性かな。」


マスターは学園長の変わらなさっぷりに呆れつつもある種の関心を寄せた。学園長は実際にこの学園の脅威から守ったことはない。全てが当時の生徒たち、それも化け物と呼ばれた人物達が脅威から守ったのだ。


「化け物どもが何を言おうと私が守「聞いて無いのならしょうがないわよね。」


躊躇無く槍が放たれた。


しかし、それは魔眼師によって止められた。


「イグアス君、いくらこの愚か者が言っては行けないことを言ったって殺してしまってはダメだよ。ちゃんと利用できるだけ利用しないとね。ここ最近のアーススキルの割符の回収も進めたいし、学園長の権限を存分に使わせないとね。」


学園長は歴代最強と謳われたダブルスキル持ちである。実践にも出て戦果も出している。だが後援だった。今目の前にいる魔眼師は嬉々として敵のど真ん中に突っ込む超前衛型、槍使いは戦い方を知らないが近接戦闘に置いて有利なことには違いない。我が国では伍長クラスなら大半が武器の使い系スキルは持っている。


学園長の魔術師はランクA

もう一つの魔術使いはランクB


そしてスキル昇華を両方とも済ませている為ランクは更に跳ね上がるだろう。その全ての魔術を持ってしても今の攻防は見えなかった。そう思うのは十分な程に早く鋭く無駄のない動きだった。


マスターの持つ魔眼の一つ結界眼によって防がれなければ間違いなく成仏していたであろう。不可視の一撃、イグアスはモヤシと言っていいくらいの細腕を用いて放ったのだ。


学園長にある二つ名を持った傭兵の魔物狩りが居た。


「姫若子、いえ鬼若子。」


かつて、四国の土佐を納めた武将が居た。


長宗我部元親


彼はそのもやしっ子の体躯から姫若子との渾名を付けられた。そして初陣にてその汚名は返上される。


「さすがに学園長さまも知っているようで成りよりですよ。彼は既に戦場に出ていますからね。貴方が研究している間ずっとスキル昇華する暇すら無く闘いに明け暮れた。」


「あら、マスター。個人情報を漏らすのはよろしくて?」


「君はもう著名人なんだからいいでしょうに。」


「しょうがないわね。後は任せるわ。」


イグアスはそっと薬指で唇を撫でた。

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