第20話

「それで愛理の聞きたかったことは何かしら?」


私は色っぽくウインクしながら訪ねてみる。愛理は打って変わって真剣な目つきになっていた。その目を聞いて私も顔を引き締めた。気を抜かずボロを出さないために


「私の聞きたかったこと。それは何故貴方が嘘をついてまで聖と叔母様を庇ったのかです。」


いきなりにも自分の嘘はバレていたようだが素知らぬふりを貫き通す。


「擁護したつもりは微塵もないわ。母を今でも憎んでいるしね。」


目をそらさぬよう愛理の目をじっと見つめて話すことで嘘を貫き通そうとした。しかし愛理は眉を顰めると


「相変わらず嘘をつくと右目が少し動く癖変わってませんね。」


どうやら自分にはそんな癖があったらしい自分でも気が付かないものである。だが私は眉一つ動かさずにとぼける。


「何のことかしらねえ。それにあなたもあまり変わっていないようで安心したわ。」


「まったく、バレバレですからね。このシスコン男。女装させたのは私ですが聖に可愛いと言われたからするようになったんでしょう。それにアーススキル、これが何か関係していますね。」


もう隠し事はできないみたいだった。


「はあ、といっても女性恐怖症は本当だからね。やっぱりバレちゃったかあ。でもね愛理は真実を知ったら例え本家を裏切ったとしても敵側につく可能性がある。だから言いたくはなかったのだけれどね。アーススキル彼らの実態は山姥、山神たちが結成した死者との境界線をなくすことを目的にした組織。名目上はね。」


「つまりは人類の撲滅ですか。しかし名目上とは?」


そうあくまでも死者との境界線をなくすためならどんなことをしようと何のためらいもないことをすると私は言ったのだ。だから愛理は勘違いをした。


「スキルができたのはいつからか愛理は知っている?」


「教科書通りなら第三次世界大戦後の生存の日だとしか。」


「生存の日、2月30日。その日から地球は異界からの重力の影響を受けるようになった。それにおいて地球の一年は366日になった。そしてスキルを授かった。ではなぜ魔力が感じられうようになったのか。」


スキルはその日から認知されてきた。しかし、魔力はそのあとから知るものが増えてきたが技術は体系化するのは早かった。そうひと月と立たずに複数の流派ができていたのだ。


「それは、まさか。」


「もともと魔力は存在していたわ。妖刀なんてものは昔から存在していたくらいにね。アーススキルの目的は教会や寺の撲滅による自分たちの再興、神仏別居の実現ね。自分たちが真の神に成り上がるためなら。彼らは禁忌すら犯す。」


かつて魔力と呼ばれた欲望の塊は否応なく悪とされ断罪されてきた。それが巡り巡って復活をしたのだ。ましては市が身近に近づいてきた日常に戦域が近いこの状況下において誰もが望むであろう一つの答え。


「死者の蘇生と不老不死。」


「そうわが父の蘇生こそが母の望み。そしてあなたも仲間になりたいと一瞬思ったでしょう。なんせ私の父と貴方の年の離れた兄は一緒に殺されたのだから。そして人間誰しもが生きたいと思う。信者は腐るほど集まるさ。」


スーッと季節外れの冷たい風が流れたいった。

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