第4話

校長室


「被害が出なくてよかったわ。」


この学園の学園長、リーン・アールブウィンディーネ


異界からの訪問者の一族の末裔で長くこの学園を支えている。その容姿は幾多の男を魅了したであろう美しい容姿だった。実際、男子生徒や教師が何人も告白したと聞く。


「ふざけるなよ。ドラゴンを開くほどのゲートを開く要因を見逃していたのはアンタだろ。」


「そうね。それに関してはこちらからは謝るしかないわね。」


申し訳なさそうに彼女は話す。その容姿と相まって許してしまうだろう、普通の男子生徒ならば。


「それにだ。槍使いとスキル昇華を未熟者とはいえ戦わせることを容認したこともだ。」


この男、全く同時ず。


「けれどあなたもそれは容認したでしょう?」


「しかし教育者としては止めるべきだった。アンタはいじめの要因になりかねない行為をいとも簡単に許可した。そこに本人達の強い意志があったとしても一度の確認が無ければ社会が黒く染まっていることを証明していることに他ならない。しかもだ、あの決闘には幼年部も来ていた。俺みたいな使い系スキルの持ち主が魔法具を用いたとはいえドラゴンに勝ったんだ。下手な希望を持たせちまったじゃねえか。」


「それはそれで貴方が指導すればいいのでは。」


「そういうわけにもいかない。アンタがよく知っているだろう。魔術師のスキルと魔術使いの両方を持つダブルスキルのアンタならな。」


なにも年の功だけが長年学園の長をするだけの資格があるわけではない。ダブルスキルという稀有な存在だからこそ彼女は選ばれたのだ。いざというときに国の未来を担う卵を守るために強さを兼ね備えた彼女が選ばれたのだ。敢えてその卵を危険にさらすのは良しとすることはできない。


「ッ!貴方、私ですら知り得ないことを知ってるくせになんで教えないの!魔術の術師系、使い系共に収めた筈の私ですら使い系は使い勝手が悪い。なのに貴方は同門の槍で術師に勝ったしかもスキル昇華した者に。」


逆ギレしさらには激情する学園長、それもその筈だ。僅か十五年ほどしか生きていない若者が数百年は生きている学園長の先を行ったのだから。


「アンタはスキル昇華をしてしまった。それも二つもだ。そんなアンタだからこそ悔しいんだろ。術師系にはない、使い系がある程度理解すると出てくる扉の開け方を知らないことをな。それと生徒の前で魅了魔術を使うのはいいが生徒のプロフィールは会う前に把握しておくように。仮にも戦う者を呼ぶんだ、愚の骨頂だぜ。」


ギリギリと学園長は歯ぎしりをして俺をにらみつけた。


「ああ、後これは借りな。」


ポンとある刻印が植え付けられた木片を投げ部屋を後にした。


そして学園長は渡された木片を見る。


「これは、テロ組織アーススキルの使う魔術式。」


そして棚からイグアスの履歴書を出す。


「父親の死後、母親に襲われ女性恐怖症を発症、それから性同一性障害も。なるほどね、効かないわけだわ。それにサクソン人の中で語られる剣の名手が父、母は日本人で北辰一刀流の分流の人。スキルが何故槍使いかは疑問が残るけれど調べる必要はないわね。これからじっくりプロフィールを作ってあげるわ。」


ここに生徒をストーカーする教師が誕生した。


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