第三八話
ラッセルとハリーはラッセルの部屋へと戻る。
「叔父上、今日はありがとうございました。あなたが来てくれなければ、ウィリアムの策略にはまる所でした」
「何とか間に合ったな。礼ならサラちゃんに言ってくれ。あのひた向きな姿を見たらな。直ぐに迎えにいってやるといい」
「はい。ありがとうございます」
コンコンコン
「ハリー様」ハリーの執事スタンが部屋へ来る。
「スタン、どうした?」
ハリーはドアを開ける。そこには、スタンと一人の年老いてはいるが可愛らしい女性がいた。
「まさか......」ハリーの言葉が詰まる。
「ハリー様.......」二人はしばらくの間見つめ合う。
「ジュディなのか.....」ジュディは目を細めハリーを見つめる。
「お久しぶりです。ハリー様.....」
ハリーは思わずジュディを抱きしめる。
「ジュディ、すまなかった。俺はあなたを守れなかった.....」
「いいんですよ。ハリー様、大昔の事です。それに勝手に出でいったのは、私です」
ハリーはジュディをそっと離す。
「ハリー様が、家を出たと聞いて、私も心が痛かったのです。申し訳ありませんでした。やっと謝る事が出来ました」
スタンはジュディをずっと探していたのだ。ジュディは各地を転々としながら、色々な屋敷で働いていた。
スタンはジュディを探しあて、ハリーに会ってくれるように説得するが、なかなか首を縦に振らなかった。
「私は、ハリー様にお会いする立場ではございません」
「ジュディさんも十分苦しまれたのではないですか?」
「私はいいのです。私を愛したばかりに、ハリー様に辛い思いをさせてしまいました」
「ですが、今もあなたはお一人で....」
ジュディはニコリと笑い
「私の罪ですから。愛する人はハリー様だけと決めましたから.....」
「ジュディさん、あなたは何と言う人なのですか。女性でありながら、ずっとお一人で.....決めました。私あなたがなんと言おうが、ハリー様に会って頂きます」
スタンがハリーにこの事を告げる。
「ジュディ、あなたは.....」
ハリーはジュディの前で片肘を付き
「こんな年老いた俺でいいなら、もう一度あなたとやり直したい。どうかこの手を取って貰えないだろうか?」ジュディは迷い、なかなか手を取らない。
ラッセルが
「ジュディさん、もう何も心配する事は無い、俺があなた達を守ります」
「ハリー様、私......」ジュディはハリーの手を取る。
そして、ハリーはジュディを抱きしめる。
「ありがとう。ジュディ。俺をずっと愛しててくれて」
「はい......」ハリーとジュディは愛を再開した。
「ラッセル王子、今度はあなたの番だ。ぼやぼやしてると、誰かに、持っていかれるぞ。あんなに素敵な子はいないからな」
ラッセルは二人を見て
「叔父上、ジュディさん、お幸せに。俺は今からサラのもとに向かいます」
ラッセルは、部屋を出ると、途中ヒューに姿を変え、パン屋に向かう。
「ステラっ!」
「待ってたよ。随分時間がかかったね」
「すまんっ、サラの居場所を教えてくれ」
「約束だからね。それよりヒュー、本当にサラを幸せに出来るんだろうね?」
「ああ、もう何も心配ない」
「あのルシアとかいう貴族の娘はどうするんだい」
「俺がルシアを選ぶはずないだろ」
「分かっていたけどね。あの女もざまあ見ろだ」
「ドット公爵家は後で、処分を決める」
「ああ、そうしておくれよ。あんな性格の悪いのが公爵様なんてとんでもない事だよ」
ステラは、ヒューにサラの居場所を教える。
「早く、迎えに行っておやり」
「ああ、ステラありがとう」ヒューは店を出ると港街に向かう。
「サラ、早くお前の顔を見たい....」
全速疾走で、走り出すと、潮の香りがしてきた。そしてシーズの前で立ち止まる。
「ここだな」ヒューは店を見つめる。
店を出てくる客が
「おっ、なんだ?この犬?腹を空かせてるのか?」
わんっと返事をする。
「ちょっと待ってくれよ。トーマスに何か貰ってくるからな」客は店へと戻る。
「トーマス、なんかデカイ犬がさ、腹空かせてるみたいで店の外にいるんだよ。あんなデカイんだから、よっぽど腹減ってるんだろ。何か余り物ないか?」
サラが、その話しを聞いて店を飛び出す。
サラが店から出て来る。
「ヒュー......」
「サラ、待たせたな」ヒューはサラを見上げる。
サラは、ヒューに抱きつく。
「会いたかった.....」
「ああ....」
トーマスが店から出て来る。トーマスはステラから白い犬が迎えに来たらサラの好きなようにさせてやってくれと、伝えられていた。
「これが、姉ちゃんの言っていた犬か。本当だったんだな。サラちゃん、今日は店の手伝いはいいから、その犬と散歩でもしておいで」
「トーマスさん、ありがとうございます」
サラとヒューは海へと向かう。歩いている間、二人は言葉を交わさない。そして、海までたどり着いた。
「サラ、元気だったか?」
「うん。頑張ってたよ。トーマスさんも皆もいい人でね。それに、ハリーさんって言う人にも、随分親切にしてもらったの.....」
「そうか....」サラは、ラッセルから別れを告げられると思っていた。
「ヒュー、元気そうで良かった!私もう二度と会えないかと思ってたの。でもこうして、最後に会いに来てくて嬉しかったっ」サラは淋しさを悟られないように、わざと明るく話し出す。
「ちょっと待ってくれ」サラは首を傾げる。
「サラ、ここじゃ人目がある。人の居ない所に行こう」
サラは、ラッセルに迷惑がかからないように、気丈に振る舞う事を決め、二人は、岩陰まで歩き出したのだった。
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