第三四話
サラは、ロビンに送られ、港街に向かっている。サラは景色を見つめ、何も話そうとしない。ロビンがその様子を見て
「サラ、何も心配ない。ラッセル王子だってきちんと考えてるんだよ。俺は男だから分かるけど、男はな、好きな人にはいつでもカッコつけたいもんなんだぞ」
「お父さんさんも?」
「びっくりするだろ?これでもステラの事は何でも分かってるつもりだ」
「ふふふ」とサラは笑う。
「ラッセル王子も不器用なだけだ。何も話さないのがカッコいいと思ってるんだ。城の事とか貴族達の事情は知らんがな。信じてやってくれるか」
「うん....お父さんって、凄い...」
「これでも、家族の大黒柱だからな」サラはロビンと話しをして、少し元気が出てくる。段々と、潮の香りがしてくる。
「サラ、もうすぐ到着だ。ステラもな、考えがあるんだよ。きっと、ヒューにお灸をすえたいんだろ」
「あっ、それお母さんが言ってた事と同じ」
「なっ、言ったろ?サラはここでのんびりしなさい。俺とステラも落ち着いたら顔だすからな」
「ありがとう。お父さん」
街に到着すると、城下町とは違う雰囲気があり、荷物を運ぶ人や、魚を売る店や露店が並び、賑わいを見せている。それに海も見える。
「お父さん、海っ」
「後で行ってみるか?まずはトーマスの所に挨拶しに行かなくちゃな」
「うん。そうだね」
サラとロビンはトーマスの店へ向かう。店の名前はダイニング・シーズと言うらしい。店へ到着すると
「トーマス、いるか?」と扉を開ける。
「ロビンか。久しぶりだな。元気にしてたか?」
日に焼けた、ガッチリとした優しそうなおじさんが出迎えてくれた。トーマスはサラを見ると
「ステラが言ってた子か。なんて綺麗なんだ。ステラが言ってたけど、ここまでとはな。これじゃ、周りのやからはほっとかないなぁ」ハハハハっとトーマスが笑う。サラは
「私、サラと言います。これからお世話になります。宜しくお願い致します。何でも手伝いますので」
「気にしないで、家だと思ってくれればいいからな」
「ありがとうございます」
ロビンが
「家の大切な娘だからな、変な虫が付かないように見ててくれよ?ステラが乗り込んで来るぞっ」
「ハハハハっ、間違いない。ねーちゃん怖いからな~」サラもおかしくなって、思わず笑ってしまう。
ロビンが
「トーマス、ちょっと街の見物してくる」
「ああ、荷物は二階に運んでおくよ」
ロビンとサラは店から出る。店を出ると
「凄いっ、見たことないお店がいっぱい」
「サラ、海でも行くか?」
「うん」と言うと、二人は海へ向かう。
深い青色の海は、キラキラと水面が光っている。
「綺麗だね...ラッセルと来たかったな....」
「いつでも、一緒に来れるさ」
サラは何も言わす頷く。ずっと海を見てると
「腹すいたな。トーマスの店に戻るか」
二人は、シーズへ戻る。
「トマス、戻ったぞ。何か定食を出してくれるか?」
「ああ、今日はいい魚が入ったんだ」と言うと魚のグリルの定食を出してくれる。サラはそれを食べると、
「美味しいっ!」と言って喜び、ロビンは
「元気になって良かった....」と呟く。
「サラちゃん、これからは毎日食べらるからなっ。それと、店を少し手伝ってくれるか?」
「トーマスさん、もちろんです。お世話になるんですから」ご飯を食べ終わると、ロビンが立ち上がり
「俺は、そろそろ帰るよ。何かあったらすぐ連絡するんだよ」
「お父さん、ありがとう」と言うと、ロビンを見送る。サラはトーマスに
「私もう少し、海を見に行っていいですか?」
「ああ、構わないよ。今日は好きにしてていいよ」
サラは一人で海へ向かう。サラは海を見ながら
「ラッセル.....」と呟き、店に戻ろうとした時、足を挫いたのか荷物をバラバラと落とす男の人が見えた。
サラは、その男の人に駆け寄ると
「おじさん、これ」と落とした物を拾ってあげる。
「お嬢さん、ありがとう」とサラに笑顔を向け
「見かけない顔だ。綺麗なお嬢さんだね」
「今日からこちらに来たんです。シーズと言うお店の手伝いをするんです」
「トーマスの所か。こんな綺麗なお嬢さんが来たんじゃ、繁盛間違いないな」
「いいえ、私なんて足手まといになるだけです」
「せっかくだから、私も店に行くかな。私は、ハリーと言うんだ。お嬢さんの名前は?」
「サラと言います」
「サラちゃんか、じゃあ行くか」
「はい」と返事をすると、ハリーは足を庇って歩いているので、サラはそっと腕を取って支えながら歩き出す。
「サラちゃんは、優しいんだね」
「いいえ、そんな事ありません。当たり前の事です」
二人は、シーズへと入る。
「戻りました」
「おや、ハリーか。もうサラちゃんに目を付けたな?」
「違います。ハリーさん足を挫いたみたいで。私部屋に行って荷物を整理して来ますね」
と言ってサラは、二階に上がる。
「トーマス。サラちゃんはいい子だね」
「そうだろ?俺の姪っ子だよ。綺麗で優しいと来たもんだ。ここいらの奴もほっとかないだろうな」
ハリーは、
「何か、訳ありか?」
「ちょっと...王子とな...」トーマスはハリーにつげると
「そうか。何があったか、知らんが、俺はサラちゃんの一番のファンだ。変なのが近寄らないように見張るかな」
「ああ、ハリー頼むな」
ハリーは、この街にふらりと現れ、何年か前からこの街に住んでる。年は60才近いが、そのたたずまいは貴族のようだ。紳士的な態度で街の皆から信用されている。ハリーは
「王子か...懐かしいな....」と呟くのだった。
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