第三三話

 サラが港街に出発した時、ラッセルは、各大臣の領土に出向き説得に当たっていた。


「カイル、これでこちらの味方は、何人になった?」

「議会の半分の5人位でしょうか」

「そうか、思ったより少ないな。まだ足りないな」

「ええ、ですが、そろそろサラ様の所にも顔を出しませんと心配されるのでは?」

「ああ、そうだな。明日はサラの所へ行くか」

「ええ、たまには休んでも問題無いかと」

ラッセルとカイルは城に戻る。


ルシアが、ラッセルの所へやって来る。

「ラッセル王子、待ってましたのよ」

「なんだ、ルシアか。何か用か?」ラッセルは冷たくいい放つ。

「まあ、やっとゆっくりお話し出来ますのに。お茶でも一緒にいかがですか?」

あまり冷たくして何か言われても困るので

「ああ、分かった」と返事をすると、ルシアはラッセルに腕をまわす。

「嬉しいですわ。早速用意させますわね。セバスっ、直ぐにお茶の用意を」

セバスは

「かしこまりました」と返事をしてお茶の用意をする。

「ゆっくりで構わん。ルシア、悪いが腕を離してくれないか」

「まあ、申し訳ありません。お恥ずかしかったですよね」ラッセルは顔をしかめる。


「ラッセル王子、最近はどちらに行かれてますの?」

「色々とな....」

「大変ですわね。私、早くラッセル王子の支えになりたいですわ」

「いや......」そんな日は来ない。と言いたがったがまだ告げるのは早い。ラッセルは、ため息をつく。

こんな所でお茶をしている暇があったら、早くサラの所へ行きたい。するとレオがラッセルのもとへ来るのが見える。


「やあ、ルシア様こんにちは」レオはルシアに挨拶をして、ラッセルに耳打ちする。

「兄さん、街では、兄さんとルシアが婚約したと言う話しが出回ってるよ。早い事手を打たないと取り返しのつかない事になるんじゃない?」

「何っ本当かそれは。出所は?」

「目の前にいると思うよ」と言うとレオは

「ルシア様、では僕はこれで」と言うとその場から離れる。


「ラッセル王子、レオ王子は何でしたの?」

ラッセルは返事をしない。

「聞いてますの?」

「ああ.....」ラッセルの顔色が変わる。そして

「ルシア、お前......」

んっ?と言って、ルシアは首を傾げる。

「悪いが、急用を思い出した」と言うと、ラッセルは席を外す。

「もう、ラッセル王子ったら、でもいいわ。これからは毎日でもゆっくり一緒にいれますもの」

ルシアはほくそ笑むのだった。


カイルがラッセルに

「ラッセル王子どうされました?」と尋ねる。

「ルシアのやつ、街で俺と婚約したという噂を流したらしい。サラにまで届いてなきゃいいが。今から店まで行ってくる」

「今からですか?」

「ああ。サラが心配だ。ヒューになって行くから、カイルは街で聞き込みをして欲しい」

「かしこまりました」と言うとラッセルとカイルは城を出る。ラッセルはヒューに姿を変え店へ急ぐ。


ヒューは店まで来るとサラを探すが、姿が見えない。

店へ入り、ステラに

「ステラっ、サラはどこだ?」と焦りながら尋ねる。

「ヒュー、遅かったね....今まで何してたんだい....」

ステラは怒りを含ませ返事をする。

「すまん。色々大変でな」

「......サラはここにはいないよ.....」

「どういう事だっ」

「さあね、自分が一番よく知ってるんじゃないかい?」ステラは冷たくいい放つ。ヒューは急いで二階の部屋に向かうと、部屋へ入る。

サラの荷物が無い.....机の上にメモが置いてあるのが見える。ありがとう。と一言書かれたメモが置いてある。急いで店に降り

「ステラっ、サラはどこに行ったんだっ」

「さあね。知らないよ」

「知らないはず無いだろっ」

「ヒュー、あんた私の約束を破ったね。サラを大切にするって言ったじゃないかいっ」ステラはヒューを怒鳴り付ける。

「ああ、もちろんだ。今もそれは変わらない」

「じゃあ、何でルシアとか言うやつがここに来るんだよ」

「まさか、ルシアがここへ?」

「ああ、そのまさかだよ。サラに私は婚約者だって、告げて帰って言ったよ」

「何て言う事だ....」

「サラは私に言ってたよ。ラッセル王子に迷惑が掛かるなら身を引くってさ。あんたが幸せならそれでいいって。ヒュー、サラみたいないい子他にはいないよ?」

「分かってるさ....ステラ、サラの居場所を教えてくれ」ステラは首を横に振る。

「ダメだ。あんたがサラをきちんと迎えらるまで居場所は教えられない」

「ステラすまん....」

ラッセルは今でのいきさつを話す。ステラは

「そうだったのかい。でもダメだ。約束は約束だ。サラを不安にさせたのは間違い無いからね」

「ああ、分かっている」

「じゃあ、早く何とかするんだね。早くしないと、サラだって、いい人見つけちまうかも知れないよ。あんな可愛い子だからね。周りはほっとか無いだろう?」

ラッセルは焦る。あと一人味方にすれば、なんとかなる。ステラは

「ヒュー、何で、もっと早く言ってくれないんだよ。私達だって家族だろ?」

「すまん。皆に情けない所見せたくなくてな」

「何言ってるんだよ。今さらだろ?」ステラは、ヒューの頭を撫でる。

「サラ、すぐ迎えに行くかなっ」と言うと、店を後にしたのだった。

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