第二五部

 ヒューの呪いは解け、ラッセルと姿を変えたのだが、シーラからナイフで脇腹を刺され大量に血を流した為、意識が戻らずにいた。医者からは奇跡が起こらない限り命の保証は無い。と告げられる。

シーラは、今もブツブツと何かを言っている。


サラとステラは、ずっとラッセルに付き添っていて、サラはラッセルの手ををずっと握り離そうとしない。

「ヒュー、あなたがラッセル王子だったのね...」

外は日が暮れようとしている。ステラが

「サラ、もう日が暮れるよ。一旦家に帰らないかい?」と言うと、首を横に振り

「いいえ、私は、ラッセル王子のそば

にいます。だって私が捨てられた時もずっと一緒にいてくれたんだもん...」

「そうかい、私は帰るけど明日また来るから」

「うん。お母さん、ありがとう」ステラは部屋を出る。


カイルは、ハンナの屋敷に来ていた。

「ハンナ殿っ!ラッセル王子が、ラッセル王子が」

「カイルさん落ち着いて、どうされたの?」カイルがラッセル王子が、シーラがアンブラに渡されたナイフで刺された事を告げた。

「なんて事、すぐ向かいましょう」と言うとハンナは指をパチンと鳴らすと、ラッセルの部屋へと瞬間移動する。

「ハンナさんっ、カイルさんっ」

「サラさん、少しだけ離れて下さい」ハンナはラッセルに向けて両手をかざす。するとラッセルの体が光に包まれる。ラッセルの傷は、徐々に塞がれていく。


ハンナは、ふーっと一息つくと、

「これで体のキズは問題ありません。刺されたナイフを見せて貰っても?」カイルがナイフを見せる。

「これは...」

「何ですか?ハンナ殿」

「ええ、このナイフは、魔女の家に伝わる禁断のナイフです。あの子どこでこれを...」

「どう言う事でしょうか?」サラもハンナを見つめる。

「このナイフは、魂を閉じ込める事が出来るナイフなのてす。ですから持ち出しは禁止とされてるのです」

「では、ラッセル王子はどうなってしまうのですか?」

「闇に閉じ込められているでしょうね」

「では、ラッセル王子は?」

「分かりません。私もこのナイフを使った事はありませんから」カイルはガックリと膝をつき、

「なんてことなんだ....」と嘆く。するとサラが意をけっして

「ハンナさん、私そこに行けませんか?」と尋ねる。

「どんな所かも分からないのですよ?無事に帰って来られるかさえ分からないのですよ?」

サラは微笑み

「はい。私はヒューがとても大事です。ヒューが刺された時、強く一緒にいたい。って思ったんです。ですので、ヒューがラッセル王子だろうと、それは変わりません。ヒューがいないなんて考えたく無いんです」と語った。ハンナは

「分かりました。サラ様、命の保証はありません。それでも行くのですね」ハンナはサラを見つめる。サラはその目を離さず

「ええ」と強い意志を見せる。

「お母さんとお父さんには伝えておいて下さい。心配するだろうから。そして必ず帰ってくると伝えて下さい」

「分かりました。ではこれをお持ち下さい。」

小さな鈴とナイフを渡される。

「これは?」

「何かございましたら、この鈴を鳴らして下さい。多少の私からのサポートも出来るでしょう」サラは鈴とナイフをポケットにしまう。

カイルが

「サラ様、どうかご無事で」と言った。

サラはニコッと笑うと目を閉じる。

「ではっ」ハンナがサラの手を握ると、サラの意識が途切れた。


サラはゆっくりと目を開けるとそこは見覚えのある森だった。ホーホーと梟の鳴き声がする。見上げると満月が登っている。

「ここは?あの森?」すると遠くから人の歩いて来る音がする。サラはとっさに身を隠す。ボロボロの姿の自分が歩いてくる。あっと声が出てしまいそうになるにを手で抑える。

あれは、私?ここは過去なの?

じっと観察していると、ラッセルが隠れているのが見える。月が隠れると同時にヒューに姿を変える。


ヒューっ!サラは泣きそうになる。しばらく見ているとボロボロのサラはヒューは抱きしめると、眠りに落ちる。そしてそのままサラは、動かなくなる。どうやらサラは、そのまま死んでしまったようだ。

ヒューは、わぉ~ん。と遠吠えするとその森から離れた。


えっ?私死んだの?急に周りが暗くなり何も見えなくなる。

どうなってるの?と考えてると又明るくなり、同じ風景が広がる。そしてボロボロのサラが歩いて来る。

これは、ラッセルの意識?最悪のシナリオを繰り返している?目を離した隙に、ボロボロのサラは又死んでしまう。そしてヒューが遠吠えをする。暗闇に戻る。


こんな事を繰り返しては、ラッセルはおかしくなってしまうわ。なんとかしなければっ。

三回目の明るくなるのを確認すると、サラはすぐに動き出すのだった。

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