第十七話
テレーザが護衛に連れ出された後、サラはステラとロビンに駆け寄る。
「お母さんっ、お父さんっ」
ステラは、サラを抱きしめる。そして、サラの髪を撫でる。
「あんたって子は...髪までこんなに切っちまって...」
「髪なんて、どうでもいいの」
「サラが来てくれなきゃ、私達今頃、死刑だったかもしれないよ」
「お母さんと、お父さんを死なせたりしないっ!私守るって決めたんだからっ」
ステラは微笑む。
「ありがとよ.....私達の娘は世界一だよ。ねっ、ロビン」
「ああ、そうだな....」
二人は、サラを抱きしめる。
ラッセルは、その様子を見て、
「良かったな。サラ....」
と呟き、立ち上がり法廷を後にしようと歩き出した時、サラがラッセル王子の元へ駆け寄る。
「ラッセル王子、ありがとうございます。証人まで連れて来て頂ただいて」
お礼を言うと、ラッセルは目を細め
「いいんだ。サラが幸せなら」
と言い法廷を出て行く。
その後ろ姿を見ながら
「ラッセル王子.....」
何故だか分からないけど、温かい気持ちになる。
カイルが来て
「皆さん、ラッセル王子が街まで送りしろ。との事ですので、外に馬車を用意してありますので、そちらへどうぞ」
三人は外に停めてある馬車に乗り込む。
道中、馬車の中で
「カイルさん、なんだって、ラッセル王子はサラの家の事知ってたんだい?」
「さ、さあ....あっ、あれですよ。サラ様は、お綺麗で有名でしたから」
「そんなもんかね....」
ステラはどうも納得が行ってないようだ。
「しかし、今回の件は、ラッセル王子のおかげなんですよ」
「そうみたいだね。カイルさんお礼言っておいておくれ。それとパン沢山焼くから渡しておいておくれよ」
「毎日食べてるかと......」カイルは聞こえないように呟く。馬車はパン屋まで到着し、
「それでは、皆さん私は、これで」
と言ってカイルは城へと帰って行く。
無事、三人は店へと戻る。
「サラ、家へ帰らなくて、いいのかい?意地悪な継母は捕まったから、もう何も問題ないだろ?」
ステラは、淋しさを気取られないように明るく話す。
「お母さん、聞いてくれる?」
「なんだい?」
「私ね、小さい頃に母を亡くして、殆んど母の記憶なんて残ってないの。それからは、継母が私の事を辛く当たるようになっていったんだけど、それでも、父の為と思い、ずっと我慢してたの。きっと、それがいけなかったんだと思うけど、お母さんとお父さんと出会う直前は、毎日どうやったら、死ねるんだろうって。神様に早く殺してくれって毎晩お願いしてたわ。でも朝になると目が覚め、生きてる自分に嫌気がした。だからね、森に捨てられた時は、やっと解放されたって気持ちと、ここで誰にも知られずに死んでいくんだって....」
「サラ....」
ステラは、サラの話しを真剣に聞いている。
「私ね、今凄く幸せなの。だってお母さんとお父さんと出会えたんだもん。ベル家を捨てようと思っています。お母さん、私ここにいていい?」
「サラ...いいのかい?」
「もちろんっ」
ステラは、ポケットから、サラの大切にしていた、ネックレスを取り出し渡す。
「これ....」
「これは、大切にしておきな。お母さんがサラを生んでくれなきゃ、私だって、サラに出会わなかったからね」
目に、いっぱい涙をため
「はい...ありがとう.....」と答える。
「そう言えば、ヒューはどこ行ったんだろうね?また迷子にでもなってるのかね」
「ヒューの事だから、直ぐに帰って来ると思います」
「そうだね。じゃあ、少し疲れたから、先に休ませておくれ」
「お父さんも、休んで下さい」
「そうだな」
と言って部屋へ戻る。
サラも部屋へ戻り、ネックレスを手に取ると、
「マーガレットお母様、私を生んでくれてありがとう」と言って机の引き出しにしまうのだった。
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