第十六話
ステラとロビンは何日か経っても戻って来なかった為、流石にサラも、城へ向かう準備を初める。
ラッセルが、カイルに連絡を取ると、どうやら、ロビンも共犯という事にされ、二人牢屋に入れられてしまったらしい。そして、城へ向かおうと、サラが店へ降りると城の護衛の者が来ていた。
「サラ様ですね。証人として、城へ来て下さいますか?」
「ええ、もちろんです。こちらから向かう所でしたから」サラは護衛を睨む。
護衛達が、聞いていた娘と違うが?美しく儚い女性と聞いていたのだが.....
「失礼ですが、サラ・レベッカ・ベル様ですよね」
「ええ、そうです。それが何か?」
「いえ、何でもありません。それではこちらへ」サラは馬車に乗り込む。
ヒューは、サラを見送ると、急いで城へ走る。カイルがいつもの川で待っていた。
「ラッセル王子、こちらへ」
馬車へ乗り込むと、薬を流し込んで貰い、人の姿へと変わる。
「状況はどうなっている?」
「今、ベル一家が城へ向かっている所です」
「なんとか間に合いそうだな」
「ええ、しかし、レオ王子は、ステラさんとロビンさんを死刑にしたいみたいで、一家とグルになっている可能性があります。か弱いサラ様一人なら、言いまかせられると」
「そうか、それはとんだ計算違いだな」
「どういう事でしょうか?」
「着いたら分かるさ、俺の出番は無いかもしれないな」
二人は、城へ到着する。
ちょうど、尋問が始まったようで、ステラとロビンが連行されて来る。裁判官に色々と質問されているが、ステラは
「知らないね。そんな話しは」
と一向に話しが進まない。
レオは王家の座る椅子に座り、退屈そうにそれを聞いている。ラッセルが法廷に入ると会場はざわざわとなり、中断するが
「かまわん、続けてくれ」
と言い、椅子に座る。
レオは驚いて、ラッセルを見る。
「どうした?レオ、俺の顔に何か付いてるか?」
「い、いえ、何も.....」
そして、テレーザが入って来る。
テレーザは入ってくるなり、
「この人達が、私のサラを誘拐したのですかっ。早くサラに会わせて下さいっ。心配で、心配で」と泣き崩れる。
とんでもない女だな。とラッセルは心の中で呟く。
ステラは、我慢出来ず
「良く言うよ。あんたが、サラに何をしてたかなんて、全部分かってるんだよ。良くもそんな大嘘が言えたもんだ。この悪魔っ」
「あなたこそ、自分のご身分で何を言ってらっしゃるかお分かりなの?」
「ふんっ、身分なんて関係あるのかい?」
「どうせ、お金が欲しいのでしょう?違います事?サラを手懐けて、お金でも要求しようとしてたんじゃありません?」
「何をっ!あんたに金をいつ要求した事があるっていうんだい?」
テレーザはニヤっと笑い一枚の紙を出す。
そして、裁判官にその紙を渡す。
「確かに、これはステラさんから、ベル家にお金の要求がされてますね」
「何だって?そんなもん誰だって書けるだろ!」
「いえ、ステラさんのサインが入ってます」
これは、レオがアンブラに作らせたものだった。
ステラは、訳がわからず黙り込む。
「ほら、ご覧なさい。やっと大人しくなったわね。それより、サラはこちらに来ているの?私が聞けば、直ぐに誘拐されたと証言するわ」
サラは、ゆっくりと、真っ直ぐ前を向き、法廷に入ってくる。
「サラ、やっと会えたわね。私あなたがどうしてるかと心配で。それにそんなに髪も短くされちゃって、怖かったでしょう?ね...サラ」
テレーザは口の端を上げて笑い、サラを脅すような顔に変わる。これであの子も震えあがって、この裁判は終わりね。テレーザは心の中で呟く。
サラはキっとテレーザを見据え
「お母様、お久しぶりです。最初に言っておきますが、私はお母様なんて、もう怖くありません」
「なんですって?何を言ってるの?」
「ですから、怖くありません。私は、あなたに捨てられて感謝しています。だってステラお母さんとロビンお父さんに出会えたんですもの」
「お母さん?お父さん?」
「ええ、それにこれも、いりませんっ」
サラは、形見だったネックレスを引きちぎるとテレーザに投げつける。
「これは、マーガレットが大切にしてたベル家のネックレスじゃ....」
「ええ、だからもう要りません。前に私から無理矢理取り上げようとしてたではありませんか。どうぞ差し上げますのでお拾いになって下さい。私、身分なんて要らないんです。私の事大切にしてくれたのは、お父さんとお母さん二人だから」
裁判官が
「サラさん、じゃあ、あなた誘拐されてはいないのですか?」
「ええ、だから最初から言ってるでは無いですか。私はずっとお母様に酷い仕打ちをされてきました。ご飯も貰えず、虐待を受け、挙げ句のはてには、捨てられました。それをこの二人が拾ってくれ、何も聞かず大切にしてくれたのです」
「おや?聞いていた話しと違いますね」
裁判官は首を傾げる。テレーザは焦って
「証拠はありますの?」と叫ぶ。
すると、ラッセルが
「カイル、あの者を連れて来い」
「はっ、ただいま」
ソフィアが部屋へ入って来る。
「サラお嬢様......あの時は助けられず、スミマセン.....」
「ソフィア...いいの。私も弱く、何も出来なかったもの」
ソフィアが一部始終語り始める。そして
「お嬢様を虐待して、森に捨てたのも、旦那様を殺したのも、テレーザ様です。私見てましたから。それに証拠も有ります」
ソフィアは、サラが飲まされた、睡眠薬とルパートを殺した毒薬を裁判官に見せる。
「じゃあ、このお金の要求されてる手紙はどうなるのよ?」
テレーザが怒鳴る。
「そんなもん、家に来て貰えれば分かるさ、金なんて無いってのがねっ」
ステラが追い討ちをかける。
「テレーザさん、残念ですが、あなたを調べなくてはならないようです」
裁判官がそう告げると、テレーザはガックリと項垂れ、護衛達に連れて行かれた。
レオは、拳を握りしめると、悔しそうに席を外す。レオは、去り際、サラか...あんな女今まで見た事も無い...と呟き法廷を出て行くのだった。
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