第十三話

 カイルがヒューを連れて来くると、カイルは城へと帰っていく。サラとヒューは、家の中に入り、まだ朝食にも早い為、部屋へと戻る。


ヒューは机に生けてある一本のバラに目を止める。

「これね、パレードでラッセル王子から、貰ったんだよ。昨日はね、なんだか不思議な事が沢山あって、私舞踏会に行って、ラッセル王子と踊ったんだよ」

サラは嬉しそうな顔をして笑う。

「私の事知ってる見たいだった....何でだろうね?それとなんか安心するんだよね。変だよね?」

ヒューは、サラを見つめる。俺がラッセルだ。と言いたいが、呪いはヒューを愛さないと、とけない。少し悲しそうな顔をすると

「ヒュー?私はラッセル王子の事は何とも思ってないよ。ただ不思議だなって。それだけ」

それは、それでなんとも言えない気持ちになる。

「サラ、朝食が出来たよ。降りといで」

ステラの呼ぶ声が聞こえる。

店に降りると、朝食の準備が出来ている。

「今日からは、普通の日が戻るからね。あら、ヒュー迷子だったんだって?犬が迷子なんて笑っちゃうね」

カイルのやつめ....と心の中で呟く。


朝食も済ませ、店の準備をしていると、常連のおばさんが、店にやって来て

「ステラ、言いにくいんだけどね、騎士風の男がさサラちゃんの事、根掘り葉掘り聞いてくるんだよ。私は何も知らないからね。何も言ってないよ」

サラは、店の奥へ行っていて、ちょうど話しを聞いていない。

ステラは、「そうかい.....」と神妙な顔をする。

ヒューは、城の誰かにサラの事がバレたのでは?と思い、嫌な予感がする.....

わんっと鳴いて、店を出る。

「んっ?帰って来たばかりでもう、お出かけかい?忙しい子だね」

サラが来て

「ヒュー?」

「なんか、急いでまた出掛けちまったよ」

「そうですか。最近はどこに行ってるんだろう?」

「心配ないさ、店の準備を始めるよ.....」

ステラも不安を隠せないでいる。

「そうですね」


ヒューは、ハンナの屋敷へ急ぐ。屋敷へ到着

すると、わんっと鳴いてハンナを呼び出す。

ハンナは屋敷から出てきて、

「朝早くに、どうしたのですか?さ、お入り下さい」と言ってラッセルを部屋へ通す。

「ハンナ、大変な事が起こるかもしれないっ」

「どうしたのですか?ラッセル王子落ち着いて」

「カイルを呼べるか?」

「そう言えば、昼過ぎにここへ来るとおっしゃてたわ」

「そうか、ハンナ。この事は胸に留めてて欲しいんだけどな」

サラの事を話す。

「そんな事が....なんて酷いんでしょう。私もサラさんの味方よ」

「ありがとう」

ベルの音がして、カイルが訪れた。

「ラッセル王子、来てらしたのですか?」

「ああ、急用だ」

「ベル家の事は、どうした?」

「その事なのですが、これから調べようと思いハンナ殿の屋敷に訪れたしだいです」

「そうか、多分だが、サラの事が城の誰かにバレた。俺とカイルの事をつけていた奴がいるかもしれん」

「そんな事が出来るのは、レオ王子の側近グレクしかいません」

「そうか、尚更まずいな.....」

「カイル、先回りして、サラを虐待していた証拠を集めろ。なんとか、カイルといつも連絡を取れるようにしたいのだが....」

ハンナが部屋の奥からイヤカフスを持って来る。

「はい、どうぞ。これを付けて下さい」

ラッセルの耳にイヤカフスを着ける。カイルにもイヤカフスを渡す。

「これで、いつでも連絡が取れますわ。試して見て下さい」

カイルが外へ出て

「ラッセル王子聞こえますか?」

「ああ、聞こえる。問題ない」

カイルが部屋へ戻る。

「ハンナ殿、凄いですね!」

「ふふふふ。私に出来ない事は無いのよ。だってアンブラとは、姉妹なんですもの!」

「えっ、そうなんですか?」

「そうよ。アンブラがあんな風になっちゃったのはね、止められなかった、私もいけないんだけどね」

ハンナは、アンブラの事を話し出す。


アンブラは昔、心優しい、魔女だった。一人の騎士に出会い恋に落ちた。その騎士はアンブラの事を心から愛していて、結婚するという約束をした。魔女は、寿命が長い為、魔女を捨てて、人間になると。しかし、約束した時間になっても、騎士は現れない。おかしいと思い、騎士の家に向かうと、その騎士は無惨にも殺されていた後だった。怒り狂い誰が殺したか調べると、それは王家の者が、アンブラと付き合ってる事で力をつけては困るといった、仲間内に殺されたものだった。もっと早く人間になっていれば....と同時にひどく人間を嫌うようになり、王家にも今でも深い恨みを持っている。

と語った。

「そんな事が....」

「だからね、あの子もね、ラッセル王子をすぐに殺さなかったのも、真実の愛を試してるのかもしれないわ。どこかで期待してるのかもしれないわね」

「そうなのか....それより、カイル、急いでベル家に向かいサラの事を調べてくれ」

「このままでは警戒されますので、使用人となって潜伏します。何かありましたら、直ぐに連絡します」

ハンナはカイルにパチンっと指を鳴らし、使用人風に変わる。そしてもう一度パチンっと指を鳴らし、カイルをベル家まで飛ばす。

「ハンナ、何でも出来るんだな」

「あんまり、使わないですけどね。人間は人間らしく生きるのが一番ですもの」

「ハンナ、ありがとう」

「いいえ、私はラッセル王子とサラさんに幸せになって貰いたいんですよ」

ハンナがニッコリと微笑む。


どうか、何も起こらないでくれ。これ以上サラを苦しめないでくれ。と思うラッセルだった。

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