第十一話
三人が舞踏会の会場へ入ると、貴族達でごったがえしている。サラは、年頃になってからは、ほとんど夜会などには、出席していなかったので知ってる人なんていなかった。
しかし、会場の隅にいても、サラの美しさを見付ける貴族達がおり
「お嬢様、私と一曲踊って下さいませんか」
と次々とダンスの申し込みがある。
「家の娘は、ダンスが得意じゃありませんの。ですので、他当たって下さいませ。おほほほほ」ステラがサラの前に出て、全ての貴族の申し込みを断りまくる。
「いったい何人断りゃいいのかね.....それより、ロビン、せっかく来たんだから何か料理持ってきておくれよ。誰も食べてないんだから、もったいないだろ」
「そうだな。楽しまなくちゃな」
ロビンが料理を取りに行く。サラはロビンを見ていると、すれ違うテレーザとエレザの姿を、見付ける。こっちへ来る。どうしようと、震える手を抑える。強くなりたいのに.....
ステラは、サラの様子がおかしい事に気づきその視線を追う。
「あいつらか.....」
サラをさっと自分の後ろに隠す。
「お母さん.....」
テレーザとエレザの話し声が聞こえる。
「お母様、まだラッセル王子はいらっしゃいませんね。私絶対ラッセル王子と結婚したいの」
「そうだね。こんな可愛いエレザだもの。見初められるに違いないわ」
二人はサラがいるとも知らず、ステラとサラの前を通り過ぎる。サラが、ほっと胸を撫で下ろすと、ステラが
「何、言ってるんだろね。自分の顔を見てみろってんだ。こーんな、つり上がった目の意地悪そうな顔してるのにさ」
とステラが自分の目を吊り上げて、サラに言う。サラは、ぷっと吹き出して
「お母さん....実は.....」
「いいんだよ。分かってるよ」
「ありがとう.....」とサラは答える。
すると、会場が暗くなり、ラッセルとレオが会場へ入って来る。
「ラッセル王子の素敵な事。ねえ、サラ」
「はい。そうですね.....」
サラは、テレーザとエレザの事で頭がいっぱいでそれどころではないようだ。ロビンが料理を持って帰って来る。
「旨そうな、料理がいっぱいだよ」
「ラッセル王子も拝めた事出し、料理を食べたら帰ろうかね」
「はい。お母さん」
料理も食べ終わり、裏から会場を出るとラッセル王子が急いで走って来るのが見える。
__________
ラッセルは会場へ入ると、サラを探す。見付けたっ。隅の方にいるが、その美しさは間違いない。直ぐに駆けつけたい所だが次々に挨拶する者がいる為、なかなかサラの元へ行く事が出来ない。すると、サラ達が会場の裏手から帰る姿が見える。
「すまんっ。挨拶は後だ」
と言い急いでサラを追いかける。
「あれ、ラッセル王子じゃないかい?こっちに向かって来るよね?」
「あ、はい.....」サラも首を傾げる。
ラッセルが息を切らせながら、サラの元へ来ると、
「サラ、俺と踊ってくれませんか?」
ラッセルが手を差し出す。
「えっ、どうして私の名前を.....」
ステラが
「いいじゃないかい、こんなに急いで来たんだから、よっぽど必死だったんだろうよ」
サラが、コクンと頷くと、ラッセルの手を取る。二人は月の輝く中、会場から聞こえる音楽と共にダンスを始める。ラッセルはサラを見つめ、サラもラッセルを見つめる。まるでおとぎ話に出てくる王子とお姫様のようだ。サラは何故か、落ち着く自分がいることを不思議に思う。
「綺麗だね」
「そうだな」
ステラとロビンはうっとりしながら、二人を見つめる。曲が途切れると、ラッセルがサラの手の甲にキスをして二人は離れる。
「サラ.....」
「さあ、そろそろ帰るよ」
「はい、お母さん」
サラは何度もラッセルの、方へ振り返り
馬車へ乗り込む。そして、馬車は走り出す。
ラッセルは見えなくなるまで馬車を見送ると
「また、後でな。サラ.....」
と呟くが、それを陰からじっと見ていたレオがいる事に気が付かなかったのだった。
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