第5話 校外学習


キャンプ場から少し離れた場所にバスは到着した。ここで先生からの注意事項を聞いて班行動に移る。


校外学習1日目

散策をしながらキャンプ場へ→昼食(校外学習センターにて給食)→テント設営→

自由時間→夕食準備(カレー)→夕食→キャンプファイアー→入浴→就寝


校外学習2日目

起床→朝食(校外学習センターにて給食)→ハイキング→昼食(弁当)

下山→バス乗車→学校→解散


となっている。

バスをおりて班ごとに歩き出す。一本道なので迷うことはないだろう。

キャンプ場までは徒歩30分位なので女子の体力的にも問題はないはずだ。

恵がやたらはしゃいで、安西さんと小泉さんを引っ張りまわしてる。2人も楽しそうなのでいいとするか。

「敏彦、浜崎君。夕飯のカレー作れるかい?俺ちょっと自信ないかも」

「あー、何とかなるでしょ。女子もいるし。ってか、安西さんの手料理食べれるとか幸せすぎるんですが。もちろん新田の手料理ももの凄い価値がでそう。他の班の奴らの悔しがる顔が目に浮かぶ」

「僕も料理は得意でないけれどカレー位なら作れるかな」

浜崎君は料理できるのか。良かった、とりあえず晩飯は大丈夫そうだな。

「女子の手料理とか楽しみすぎてアドレナリン半端なくでてる。力が漲ってる」

大げさな敏彦である。

「女子が料理できるか分からないから。最悪、浜崎君にまかせる」

「その時は頑張るよ」

浜崎君、すごく頼もしい。



はしゃいでた恵が戻ってきた。

小泉さんに引っ張ってもらっている。

「歩き始めて10分でどれだけ疲れているんだよ」

楽しくてはしゃいじゃったと恵は言う。安西さんも小泉さんも一緒に楽しみすぎたのだろう。少しぐったりとしている。

「ゆっくりでいいから歩こうな」

「引っ張って!」

手を出す恵だが、

「おしい。安西さんか小泉さんだったら引っ張ってた」

贔屓はよくないと思いますー!と恵は叫ぶ。敏彦が俺が引っ張ろうか?と言っていたが断られてた。

結局、浜崎君が犠牲となっていた。可哀そうに、女の事と手がつなげない敏彦が。



ゆっくり移動した俺たちも昼食予定の校外学習センターに到着した。

浜崎君はなぜか燃え尽きている。恵の他に小泉さんも引っ張っていたからな。両手に花ですねっ!

みんなで昼食の食べた後はテント設営だ。

「テントたてた事ある人いる?」

敏彦の問いに手を上げる者はいない。一応、組み立ての説明書プリントはある。

それじゃ組み立てるか。ここは男が頑張らなくっちゃね。

「俺たち頑張ってテントを組み上げるから、カレーは任せるぜ」

敏彦のやる気頂きました。

「彩奈と桂子さんには、あたしがカレー作りを仕込んだ。だから問題ない」

恵のみょーな自信はどこからくるの?

あと、小泉さんのこと桂子さんって名前で呼んでいたな。仲良くなったんだ。うんうん、いい事だ。



男性陣は説明書を見ながらなんとかテントを組み立てた。

テントのロープをぴっちり張るのに苦労はしたが、出来上がりはまずまずだろう。

「私、テントに泊まったことないから少し楽しみ」

安西さんは初体験のようだ。俺と一緒に初体験。うん、馬鹿だ俺。

「すぐ隣のテントだから何かあったらすぐに声をかけてね。虫がいたら捕まえるし、お化けがでたら一緒にガタガタ震えるから」

お化けでたらどうしようもないけどな。むしろ俺が一番怖がるかもしれない。



テントを設営した後は夕食準備までフリータイムだった。

といってもキャンプ場から離れられないので、テントサイト脇を流れてる川で遊ぶくらい。

川に入るのは水か冷たくて無理。ぼけっと川岸に座り、水が流れるのをのんびりと眺めることにした。

何も考えずに過ごす時間。水の流れる音に癒される。

一緒にいた敏彦と浜崎君も、あまりに退屈だったのか途中でいなくなっていた。

俺は川原の石に腰かけてマイナスイオンの補給を続行する。

暫くすると恵や安西さん、小泉さんがやってきた。川原に座り込む俺を見つけて寄ったらしい。

「千秋みっけ」

俺は癒されてるんだから邪魔しないの。

「今、マイナスイオンを取り込んでる。心も体も癒してる最中だから邪魔しないで」

「そんなの効果あるの~?」

あるに決まってる。信じる者は救われるって言うし。

「それじゃ私たちもマイナスイオンを取り込もうかしら」

安西さんが隣の石に座る。恵も小泉さんも続いて座った。

「マイナスイオンを浴びながらの森林浴だからな。明日はお肌がつやつやだぞ」

3人は黙ってマイナスイオンを浴びだした。



静かな時が流れる。癒される。景色に、音に。

そんな中、小泉さんが口を開いた。

「あの、今回の班決めに誘ってくれてありがとう。迷惑じゃなかったかな。私、どんくさいし話ができる人もいなくて。自分から言い出すこともできなかったから」

「俺たちが小泉さんを同じ班に誘いたかったから誘った。それだけだよ。もしよければ次の機会があった時は、今回と反対に俺の事誘ってよ」

浜崎君も小泉さんも話せば普通の高校生だ。同じ班になればわかる。きっかけがなかっただけ。ならばきっかけを作れる人が作ればいい。

「そうだよっ!あたしの事も誘ってね。もちろん彩奈ちゃんもだよ」

恵は本当にすごい。どんな人ともすぐに仲良くなるからな。

「うん、ありがとう」

にっこりの小泉さん。かわいいね。


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