湘南純愛組

 僕が『湘南純愛組』を読んだのは、まだぶきっちょな正義感に囚われていた中学生の頃。


 自由を求めて、心を一回でも多く、1ミリでも大きく動かしたかったあの頃、この漫画に夢中になった。


 不良にシバかれたり、先生と服装のことで口喧嘩したりして慌ただしく毎日を過ごしていたあの頃の僕にとって、『湘南純愛組』はドストライクな物語だった。


 展開とか演出はどこまでだって派手なのに、心理描写だけは妙に生臭い。


 そこには紛れもなく、“等身大の不良少年”がいて僕の心を強く動かしてくれたし、


 同時にたくさんのことを教えてももらった。


 情に熱くて優しいけれど、気分次第で割と酷いこともしちゃう鬼塚から優しさの種類は一つじゃないことを、


 恋にも友情にも真っ直ぐだけど熱くなると無茶苦茶やっちゃう弾間からは心が強く引っ張られるものを追いかけ続けることの大切さを、


 とにかくたくさんのことを教えてもらった気がする。


 間違ったことをしちゃった奴だって、誰かのために熱くなったらそれはちゃんと優しいんだって、


 納得いかないことを諦めなくても、誰かにそれは間違ってるって言われたからって下を向かなくてもいいんだって、


 沢山の勇気もくれたと思う。


 笑って、暴れて、恋をする。


 そんなシンプルなことをし続けるってことは意外な程に難しくて、


 けれどそれが運んで来てくれる喜びもとびっきりに大きい。


 『湘南純愛組』のことを思い出すと、そんな昔当たり前に大切にしていたけれど、今は心の中でモヤがかかっちゃってる気持ちを思い出させてくれる。


 

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僕がヤンキー漫画からもらった大切なもの。 ゆきだるま @yukidarumahaiboru

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