フィクションが救いに来た。

今日、「グリッドマンユニバース」を見た。


「SSSS.GRIDMAN」「SSSS.DYNAZENON」


この二作品のアニメシリーズに続く劇場版作品だ。もっと言えば、特撮番組「電光超人グリッドマン」の続編的アニメの映画だ。


僕は95年生まれなので、グリッドマン放送当時はまだ生まれていない。だけど、子供の頃ビデオか何かで見たのを覚えている。たしか、同じく特撮好きの姉さんに見せてもらったんだっけか。何年も前に亡くなってしまったが、彼女の存在は僕の趣味趣向に大いに影響を与えている。


ここから、ネタバレ含む感想などにながるよ。注意してね。


上映中、僕は何度もポロポロと涙を流していた。というか、勝手に涙が出た。僕は映画で泣くことは結構あるし涙もろい方だけど、映画館で泣いたことはおそらくないと思う。僕は相当信頼している人の前か、一人のときでしか泣かない。


じゃあめちゃくちゃ泣ける映画なのか? というと、少し違う。


確かにSSSS.シリーズを見ていれば、泣ける感動シーンはたくさんある。レックスが「なんとかビーム」ということで、ガウマ本人であることが確定するとか。蓬くんとの再会とか。


割と序盤の方から涙ちょちょぎれシーンはあるけど、それはシリーズを愛しているからこその涙であって、泣ける映画という評価にするには違和感がある。


本作、どうしてこんなに泣いたのか。上映後サウナでととのいながら考えていた。


本作はSSSS.GRIDMANの世界を軸にして語られていく。TVアニメ本編は高校1年生だったグリッドマン同盟のみんなが、2年になっていた。学祭の準備の真っ最中だ。学祭では、内海と六花のクラスでグリッドマンの演劇をするという。その脚本を練るというのが、本作の事件の裏で進行していく。


最初はあかねのことをメインに、本編中の出来事を再現していくような脚本だった。六花いわく「私が一番伝えたいこと」が、あかね周りの話とのことだ。


だけど周りは「リアリティがない」「もっとバトルを見せる構成に…」と、あかね周りの部分に関して色々言っていく。


僕は、「SSSS.GRIDMAN」のあかね周りの話が好きだ。あかねが抱える心の問題は、割と誰にでもあるようなもの。自分の殻に閉じこもり、自分が作った虚構の世界に引きこもっていた少女。


彼女を救ったのは、まさに虚構の存在だった。自分で生み出した心ある怪獣に救われ、グリッドマン同盟に救われ、かつて少年少女が生み出したグリッドマンに救われる。徹底して「フィクションによる救い」を描いている。


そこが、僕が「SSSS.GRIDMAN」を好きな理由だった。


ただ、この要素はあまり伝わっていなかったようにも思う。単純に特撮のアニメ化として、熱い作品として人気になった節がある。劇中で「リアリティに欠ける」「もっとバトルを」と言わせることで、制作者の自虐を感じた。


じゃあダイナゼノンはどうだっただろう。


ダイナゼノンも、虚構に救われるお話だったように僕は思っている。


怪獣優勢思想の面々は、怪獣という非日常の虚構的な存在に救いを求めた。散り際が爽やかだったことから、おそらく彼ら彼女らの心も救われたように思う。実際、ムジナさんなんか怪獣を通して自分の存在意義とか目的意識とかを知り、救われていたような描写があった。


ガウマ隊は、ダイナゼノンという虚構的存在を通して自分の心の傷と向き合い、前を向くことによって救われている。


じゃあ本作で虚構に救われたのは誰?


グリッドマンだ。


本作で、ダイナゼノンの世界はグリッドマンが生み出した数々の世界「グリッドマンユニバース」のひとつだと明かされる。作中の描写的に、ダイアクロンのグリッドマンコラボとかもそうだったんだろうね。グリッドマンの数々のスピンオフ、コラボ世界が全て繋がるような感じ。


グリッドマン自身も創作物だが、人間と関わることで空想する力を身に着けた。それを誰かに利用されている、というのが本作中盤あたりで語られる。虚構によって苦しんでいる状態だった。


ところが、あかねにより作られた虚構の存在であるナイトくん(アンチくん)やグリッドマン同盟、そしてグリッドマンにより作られた虚構の存在であるガウマ隊に救われる。


ここまで徹底して、フィクションによる救いを描いてこられると、創作物をこよなく愛するオタクとしては刺さらないわけがないというものだろう。


そして、子供の頃に見たヒーローが救われた姿を見て、泣かないわけもなかった。


空想と空想の産物であるフィクションと、それに救いを求める僕らの心を凄まじい熱量と勢いで肯定してくれるような温かい作品だった。主題歌もそうだね。


「さあ顔を上げて 僕に見せて 君が持ってるユニバース」

「時代は変わる 僕らは変わる それでも心はユニバース」

「一人じゃない いつまでもどこまでも 重なり合うよユニバース」


電光超人グリッドマンの時と比べ、時代は大きく変わった。もう令和も5年だよ、信じられないよね。当時平成5年だよ。


僕らも変わった。年月が流れ、当時の子供は全員大人になった。あとから見た僕ももうアラサーになってしまった。それでも、やっぱり僕は特撮が好きだし、アニメが好きだし、小説が好きだしゲームが好きだ。


それでいいんだよ、と力強く肯定してくれる。エンドロールでも泣いた。そら泣くよ。


今考えてみれば、「君を退屈から救いに来たんだ」という「SSSS.GRIDMAN」のOP曲「UNION」の歌詞も本作に通ずるところがあるよね。退屈から救ってくれるフィクションに、僕らは心を救われる。


そして本作は、「おら!救いに来たぞ!」という力強い救いだった。


フィクションが全力で僕らを退屈から、そして心の傷から救いに来た。


ありがとう、グリッドマン。君を好きでよかった。


ありがとう、TRIGGER。ありがとう、円谷プロ。


凄く元気が出たよ。


パンフレット、買えなかったよ…。公式通販でぽちりました。本当最高です。御託を並べてきましたが、御託抜きで面白い…。なんだこの作品。胸いっぱいだよ。

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