「酔ってます？」二杯目と共に……。

死にたいとか抜かす奴……タダで死ねると思うなよ！

　僕は大切に思っている人に「死にたい」と言われれば、「樹海デートでもします？」と答えることがある。冗談半分だけど、こういうことを言うと大抵の人が尻込みをする。ノリノリになられても、それはそれでいい。僕がこういう返しをする相手となら、心中しても構わないし。

　ただ、そこまで大切に思っていない人には違う言葉を返す。

「金を作ってからにしろ」

　自殺は、金がかかる。

　部屋で首を吊ったとする。

　部屋に悪臭が染み付いたり、部屋が汚れたりしてクリーニング代がかかる。人死にがあったときの清掃代は10万円以上かかることがある。しかも事故物件として部屋の価値が下がることに関して、損害賠償を求められることもあるかもしれない。

　電車に飛び込んだとする。

　電車が止まったことに対する損害賠償請求があるかもしれない。下手をすると、急停車した際に巻き込み事故が発生する可能性がある。そこで大怪我をしたり死んだりする人もいるかもしれない。そうなると賠償金は莫大だ。

　山の中で死んだとする。

　捜索隊が駆り出されるが、捜索するにも金がかかる。猟師も仕事を休んで創作を手伝う。20万や30万ではきかない。莫大な金がかかるんだ。

　海に飛び込んでも同じだ。

　捜索が行われ、漁師も仕事を休んでそれを手伝うことになる。近隣のホテルなどにさまざまな電話がかかってくる。場合によってはホテルの営業も一時的に止めなくてはならないかもしれない。とにかく金がかかる。

　こういう金を誰が払うか？

　遺族だ。

　遺族は身内が死んだ事実と共に賠償金を払わされることになる。葬儀をしたりしようものならさらに金がかかる。死ぬのもタダじゃない。

　だから僕は「死ぬとしても金を作ってからにしろ」と言う。葬儀代と賠償金と合わせて1000万円くらいは用意しないとね。どう自殺しても金銭的に迷惑がかかるんだ。

　タダで死ねると思うなよ！

　偉そうに言う僕も、死にたがりだ。

　それでも、自殺後に払う金がないから生きている。