41日目 声は聞こえる
「これ、声は聞こえるんですか? 聞こえると嫌なんですけど」
天井に監視玉を埋め込んでいるコタンに向かって、バラカ支社の女性社員が聞いてきた。脚立に乗って作業をしているコタンを見つめながら、不安そうに声をかける。
「あ、ええっと……」
監視玉の設置および設定のレクチャーを受けたコタンは、実は現地の音声を本社で聞くことができることを知っていた。
だがそれにはちょっとだけ面倒な手順が必要なのでほとんど音声の再生は実装されていないのと、これからも実際に聞かれることはおそらくないだろうと思っていたので、コタンは返答に困った。
ここではっきりと、「聞こえます」と言ってもいいものだろうか。
それとも、いったん本部か社長に「聞こえます」と言ってもいいですか? と聞いた方がいいのか?
考えるうちにコタンの額に汗が噴き出した。
「えーと、よくわからないです。今度聞いときます」
「そうなんですね」
嘘はついていない。コタンは自分を納得させた。
「だってね、声が聞こえるとしたら嫌じゃない? 本社に聞かれたくない話をすることもありますよね?」
「そうですね」
「愚痴だって言い合えた方が絶対に精神的にいいですしね。コタンさんの支社の皆さんは不満とか言ってません? あ、お茶とお菓子どうぞ」
「えーと、あ、ありがとうございます!」
主張しての作業は大変だが、支社で仕事に追われるのとは違ってラクな面もあるな、とコタンは考えた。
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