42日目 敵国

「来週、新たなプレゼンを行いますので、企画書の作成をお願いすることになります。必要な資料は用意していますので、掲示板から各自ご確認をお願いいたします」


 えっ?


 会議中に聞こえた女魔法使いの声に、コタンと隣の席のナフェルタリは思わず顔を見合わせた。膨れ上がる不安とともに、女の子と心が通じ合ったような気がして、ちょっとうれしいコタンだった。


「このシステムを敵国にも売るんだよ」

「えっ」


 一瞬、自分の耳がどうかしたのかと思った。

 支社内の動揺を感じた上司のアムラトが、聞こえるようにつぶやいたのだった。

 すぐさま社長が説明を始めたので、その疑問はすぐに解消した。

 だが、すぐに新たな疑問が次々に生じることになったのだが。


「あのね、わが社の提供する魔機構システムがね、非常に素晴らしいということで、このたび、特別にお声がけをスティギア国の方からね、いただいたんですよね。ぜひ我々としてもね、せっかくの素晴らしい魔機構システムをね、様々なお客様に使ってほしいということでね、前面に押し出していくことになりました。

 まだね、完全に完成したとは言えないんですけれども、みんなにもね、連日頑張ってもらっているけれども、引き続き協力をお願いしたいと、そう思ってます。

 ザルトータン君はじめチームの皆さん、ほか協力してくれる社員のみなさん、どうかよろしく頼みますね」

「……あー、お願いしまーす」


 力のない返事が数か所から漏れ聞こえた。

 やばい。なんだかわからないがこの人はやばい。

 コタンは得体のしれない焦りを感じたが、それをうまく言語化する能力を持ち合わせてはいなかった。

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