39日目 食い違い

「で、次が(桃)ノットオンリードクロバットオルソーさんなんですが、話が違うと言っています」

「どう違うって?」


 〈全自動〉推進会議で、コタンの上司であるアムラトが魔機構システムの開発を進めている外注企業とのやりとり及び進捗について報告している。

 話の内容の半分も理解できなかったが、計画がうまくいっていないことは何となくわかった。


「最初の話だと、仕様はもっとしっかりしているはずだったと言っています。今の指示は曖昧過ぎると。細かい仕様まで考えるなら、もっと期間と費用が必要と言っています」

「なるほどね。それはこっちにも問題があるよね」


 ほとんど、アムラトと社長の会話で会議は進んでいった。ただ、他の者が発表している場合でもそれは同じで、社長以外の人間が発表について口を出すことはほとんどなかった。


「次に、(死)怨霊堂さんですが、質問事項が溜まって、返答が来るまで作業は再開できないと言ってます。指示の出し方も最初に聴いていた話とは違うと。納期は伸ばしてもらわないと困ると言ってきております」

「えっ? 質問に答えてないの? なんで?」

「はい、それは……」

「疑問点にはすぐに答えないと! 困るでしょ、こっちがお金出しているとはいえ、思いやりをもって接しないとね! 誰が担当者なの?!」

「はい、先日辞めたトトラスメクさんです。昨日まで質問が来ているのに気づかず……」


 沈黙が会議内に訪れた。


「……とにかく、待たせておくわけにはいかないから。ザルトータン君、現状の、だれが何の作業をやっているのか、だれがどの企業さんの担当なのか、今日中にまとめて一覧にしてくれる? それを見て足りないところを再配置していくから。今日中にやってね。最優先で!」

「かしこまりました」

「とにかくね、スピードを大事に! 5倍のスピードで対応してね!」


 仕事がまた増えた。コタンは暗い気持ちで考えた。

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