38日目 監視玉

「え? 監視はされてるよ。見えなかった?」

「えっ、どこですか? なにがですか?」

「ほら、あれ」


 どうやら本社の社長室から、各支社の光景が見られるようになっているらしい、といううわさをほかの社員に聞いたコタンが、上司のアムラトに聞いてみたところ、アムラトはこともなげに答えた。

 アムラトが指をさした先にある天井の隅には、なにか光るものが埋め込まれていた。


「あれ、なんですか?」

「あれはね、監視玉。水晶玉の小型版なんだけど、精度はかなりいいらしいよ。個々の支社全体の呪像を本社に送ってるんだよ」

「監視してるんですか」


 隣の席のナフェルタリも大きな目を開いてこちらの会話を聞いている。やはり気になるらしい。


「うん、社長室には水晶玉が20個くらい並べてあって、各支社の光景が24時間見られるらしいよ。それで居眠りをずっとしてた社員が首になったことがあったらしいよ」

「そ、そうなんですか……。見てるんですね」

「うん、時々見てるらしい。だから、あんまり不審がられるような動きは避けた方がいいね」


 ストレスの種がまた一つ増えた。

 というよりも、改めて気付いただけだ。


 隣の席のナフェルタリの笑顔が少なくなっていることにコタンは気付いていた。

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