37日目 確認もれ
「え? そんなこと言った? 聞いてないよ? いつの話?」
「先週末、日報で報告しております」
「あのさー、文書の数が多くて読んでも忘れちゃうからさ、リマインドしてくれないと困るよ!」
会議中に社長の甲高い声が響き渡った。
発表したどこかの支社社員の女性が縮こまるのが見えた。
「日報じゃなくて! ちょっと待って返事がなかったら、もう一度聞いてね。大事なことだったら困るでしょう。何よりお客様が困るよね?! 思いやりがないよね? そうだよね、ザルトータン君」
「……はい、そう思います」
無茶を言う。
一度聞いただけでは見過ごしてしまう可能性があるから、もう一度聞いてこいと社長は言っているのだ。言っていることはわかるが、問い合わせをしてきた当人をしかりつけるのは筋が通らないような気がした。
「大変申し訳ございません、以後気を付けます……」
コタンは混乱した頭を整理しようと努めたが、憤りが大きくなっていくばかりだった。会議内では、社長が正しいという雰囲気に満ちているのが各員の表情から読み取れるのも不気味さを感じさせた。
会議後、支社内も混乱した。
「アムラトさん、どうします? 何時間返事がなかったらリマインドすることにします?」
「問い合わせるのは社長に直接ですか? それとも上長を通じてですか? あっ、それか秘書課に?」
「その日じゅうに返答なかったらどうします? 結局日報には書くんですよね?」
「どのレベルの疑問まで問い合わせます? こないだ、私の判断でいいよって言われた案件、なんで確認してから進めないんだって怒られたんですけど……」
一つ一つの疑問に答える支社責任者のアムラトも困り顔だった。
日々増えていく無理な要求にはストレスを感じるが、社員全員が困っているとそれが分散されるのか、やや気持ちが楽になるコタンだった。
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