47日目 生き返らせるのは強い人から

「これさ、強い人から生き返らせたほうが良くない?」

「……」


 新たな仕様の変更、いや追加機能が今まさに生まれようとしていた。


 外注の会社も参加する大きな会議内で、社長の大きな甲高い声が響き渡った。

 〈全自動〉魔機構システムの進捗を確認する前提で、魔機構システムの仕様を説明、というかおさらいをしている最中のことだった。さえぎられた司会の総呪術監督グランドディレクターであるザルトータンの声が止まった。


「は……社長」

「これさあ、今って、死んだ人を生き返らせる順番ってランダムでしょ。そうでしょ? じゃなくて、例えば同時に二人が死んだとして、もしそのうちの一人が、すごく強い人だったとするでしょ。それなら、その人を先に生き返らせて戦に復帰させた方が、有利だよね? そうじゃない? ザルトータン君」

「……そうですね」


 外注会社の死霊術師ネクロマンサーが目を丸くするのが見えた。もともと骸骨のような顔で大きな目をしているその人は、驚くとさらに骸骨のような顔に見えた。


「仕様変更するってことですか?」

「いや、そうそう! いや、それも考え方の一つなんだけどね、仕様変更というか、このよい〈全自動〉魔機構システムを、さらに良いものにしていこうという気持ちはね、皆さんには共有しておいてもらいたいとね、そう思ってます」


 上司のアムラトが会議に聞こえないように舌打ちしたのが、支社内でははっきりと聞こえた。


「もし仕様変更ということになればですね、当初に聞いていた工数とは異なることになります。それと、契約書にある通り、仕様の追加は報酬の追加及び納期までに実現可能かの判断をしなければなりませんよ。それでもいいんですか?」


 外注業者の言葉に、社長が言葉をかぶせた。


「いやね、そういう考え方はして欲しくないのよ! この〈全自動〉魔機構システムを、ぜひいいものにしていきたいと、我々は考えてるんですよ! ザルトータン君、後でミーティングね、いい? あー、(死)怨霊堂さんね、あなたのところは前回の仕様で大丈夫なようにしますからね、(死)怨霊堂さんには負担がかからないようにします。引き続きね、よろしく頼みますよ。ザルトータン君、それでできるよね?」

「……できます」


 社長が会議中に魔機構システムの基本部分を思いつきでどんどん変えてしまうのはよくあることだった。ただ、外注業者に向けて思いつきを口にしてしまったのはおそらく初めてで、その違和感に社長も気づいたようだった。


 「はあ~……」


 支社の上司のアムラトはだんだんといら立ちを表に出すようになってきたな、とコタンは思った。

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