「あ、そんな書き方ありなんですか？」

「そうなんです、これで朝の30分稼げますよ」

　コタンは、隣の新入社員の女の子、ネフェルタリの報告書を見た。

　ナフェルタリの方から、報告書の書き方についてコタンに相談してきたのだが、実際に彼女の報告書を見てみると逆にコタンが教わることの方が多かった。

〈連絡帳チェック　10分〉

〈報告書返信チェック　10分〉

〈作業指示書チェック　10分〉

「実際はこんなに時間かからない業務ですけど、とりあえずこう書いておいて怒られたことはないので、朝の30分が稼げるわけです！」

「へー、それいいですねー、僕も真似しようかな」

「ぜひぜひ！　みんなでやれば怖くないですし」

　その日の夕方、コタンのもとに社長（秘書課）から連絡が届いた。

〈出社より30分間の内容が不明なので具体的に記載すること。また、時間がかかりすぎなので各業務５分ずつに修正すること。修正後は上長のチェックを受け、再提出すること。17：00までに再提出すること〉

　なんで……。

　コタンは理不尽さに怒りさえ覚えたが、ナフェルタリに聞くことはやめた。話を大きくすると彼女にも火の粉が降りかかるかもしれない。

　支社の片隅で、また本社で退職者が一人出たという声が聞こえた。

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