24日目 脱落者

「最近、ムリエラさんの姿見ないですよね。なんか知ってます?」

「あ、ああ……」


 コタンが質問すると、上司である2級魔道師セカンド・ソーサラーのアムラトは答えづらそうに天井の方を見た。


「彼女ね、辞めたんだよ」

「ええっ?!」


 大声を出したコタンを、支社内の人間数人が顔を上げて見た。

 スパイとして他社の魔機構システムを探っていた女写本師オペレーターのムリエラは、いつの間にか退社していたのだ。


「でも、なんでですか……」

「ええとね、社長から連絡が頻繁に来るようになったのがつらくなったみたい。業務時間外にも連絡が来たらしいよ。あと、やっぱり他社の調査とかは嫌だったみたいだね。あと、報告書とかが多すぎるのもいやって言ってた。ああ、あとは業務比率とか強要されるのもストレスを感じるって言ってたね。あとは……」


 退社理由が驚くほどずらずらと出てきたのでコタンは驚いた。

 ムリエラにもう会えないと思ったコタンはがっかりしたが、改めて会社の目に見えない異常性というか、ストレスのかかる仕組みにぞっと底知れない恐怖を覚えもした。直接の被害者ではないコタンの額に汗が湧いた。


「で、今日から新入社員が入るから。ムリエラさんの机と水晶玉、魔道具ツールをそのまま使うからコタン君教えてあげてね。それまでは昨日の受像を編集しててね」

「えっ、あっ、はい。……えーと、編集? のやり方を教えてもらえますか」


 昼すぎ、新入社員が出社してきた。


「初めまして、ナフェルタリと申します! 右も左もわかりませんが、よろしくお願いいたします!」

「はー、はい!」


 新入社員は若い女性だった。

 話しかけられたので、コタンはナフェルタリをすぐに好きになった。

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