2日目 会議

 本社会議は国内の支社すべてが参加している。

 参加人数は100名弱。全社員ではないが、半数以上だ。

 入社して数か月、今まで比較的気楽に呪文書の写しと魔晶石の魔力の整理などを日々の業務としていたコタンは気が重くなるのを感じていた。


「会議ってどういう人が出るんですか」

「別に決まりはないよ。社長の選別」


 木製の斜め机を挟んで正面に座っている上司のアムラトに聞くと、そっけない返事が返ってきた。


「会議出るのは全然いいんですけど、仕事しながらっていうのが地味にキツそうですよね」

「あ、会議中は仕事しちゃいけないんだよ」

「?! みんな仕事してますよね?」

「そうじゃないと仕事終わらないからね。手元は映らないから」


 本社会議は会議用に配布された水晶玉と、耳に当てる魔道器で参加する。

 水晶玉には参加している者の顔がずらっとならび、発言の際には発言者の顔がアップになる仕組みになっている。

 コタンは緊張のあまり、吐き気がするのを感じた。


 その日の会議も3時間を超え、別の会議が控えている社長が閉会を宣言したのでコタンはその日、運よく発表せずに済んだ。


 いつもは10枚くらい呪文書の写しができるのに、その日は3枚しかできなかった。1日のノルマは7枚だ。


「今日終わらなかった分は明日やってね。残業するのは会社がダメと言ってるから」


 上司のアムラトはそう言いつつ、自分は退社するそぶりを全く見せなかった。

 コタンは魔筆や魔墨汁などの道具を片付け、会社を出た。

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