全自動戦術型ネクロマンシー ~100日後に崩壊する魔術系企業~

ODANGO WORKS

1日目 新プロジェクト

「ネクロマンシーって何です?」

 新プロジェクトの名前を聞いた魔術師志望の写本師オペレーターであるコタンは、直属の上司である2級魔道師セカンド・ソーサラーのアムラトに聞いた。


「ああ、死霊術だよ。死んだものを生き返らせる系の」

 アムラトはいつも通りの、冷静な声で答えた。


 そのときコタンは耳あて型の魔道器で、本社の会議に耳だけ参加させられていたのだった。

 会議の内容は難しすぎて全く理解できなかった。

 コタンの手は魔術書の書き写しの作業を続けている。


「では、最後に全員に一言ずつ発表してもらいます。共有事項などありましたら発表していってください。まずナトークさん、何かありますか」

 会議はもう三時間続いていた。司会進行を務めている本社の女魔法使いが社員に一人ずつ所感を発言させていった。会議は一時間後に終了した。


「この会議って毎日出ないといけないんですか」

「そう。今日からずっとね。明日からはコタン君も発表してもらうから」

 アムラトの言葉に、コタンは気分が重くなった。


「何を言えばいいんですか?」

「今日やったことと、明日やること、あと作業中に気付いたことね。それぞれ作業時間と進捗の状況、明日の目標時間も入れて発表してね」

「マジですか」

「みんな発表してるでしょ」


 会議を聞きながら作業したせいで、魔術書の写本作業はあまり進んでいなかった。何とか完成させたページも、あちこちミスがあった。

(魔術書が間違ってたら、この通りに呪文を唱えても発動しないのかな)


 上司の魔道師にミスのことを報告するべきだったかもしれないが、コタンは完成物をそのまま提出した。早く家に帰りたかったのだ。

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