第9話
コヴェントリー侯爵家の屋敷に戻った時には、当面必要なモノは全て王城から洞窟に運び終えていました。
でもそれをコヴェントリー侯爵家の使用人に教える必要などありません。
私は使用人達の本性が知りたいのです。
それによって使用人達をどう扱うかを決めようと思っているのです。
「ヴァルナ様、お食事の準備ができております。
食堂の方においでください」
「分かりました」
私とアウロラが食堂に行くと、豪華な食事が用意されていました。
上級使用人がほとんど全員そろっているようです。
いえ、そんなはずはありませんね。
私が膝を潰したコヴェントリー侯爵とダニエラを介抱している者がいるはずです。
一番眼つきの鋭い男がハウス・スチュワードなのでしょう。
私を罠にはめるにしても懐柔するにしても、使用人の中で最も権力と能力を持った者が相対してくるはずです。
この屋敷を出る前に話しかけてきた女もいます。
やはりレディーズ・メイドなのでしょう、給仕服を着ていません。
「では、席におつきください」
ハウス・スチュワードが勧めてくれるので、アウロラと向かい合って食事をすることにしました。
どう考えても毒殺する心算なのでしょうが、どのタイミングで毒入りの料理を出してくるかです。
「食前酒とオードブルでございます」
さて、最初から毒入り料理を出すとは思えません。
私達が毒見をしろというのを想定しているはずです。
恐らく毒見の後で素早く毒を混入させるか、皿かカラトリーに毒を塗布して、分からないように口に入れさせようとするでしょう。
でもこんな初歩的なやり方は、貴族なら誰れでも知っていて、警戒しています。
もしここで毒見をさせなかったら、やり方を変えるでしょうか?
「毒見してくださるかしら?」
「はい、お任せください」
ハウス・スチュワードとレディーズ・メイドは何の動揺も見せませんね。
毒殺に手慣れているのかもしれません。
この二人の表情を読むのは難しいかもしれません。
フットマンが給仕をしてくれます。
いざという時には私達と戦うつもりでしょうか?
そうでなければ令嬢の私達にはパーラー・メイドが給仕するはずです。
「スープでございます」
何の危険性も感じません。
今日勝負をかけるつもりはないのでしょうか?
今日は信用させておいて、明日以降に毒殺する心算なのでしょうか?
フットマンは幾度も毒殺にかかわっているようで、何の感情も読み取れません。
フットマンとパーラー・メイドのなかで、もっとも毒殺に慣れた者を選抜したのかもしれませんね。
どう対応すべきでしょうか?
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