第8話
私はアウロラを御姫様抱っこしても荷物が運べるように、王城の使用人に背負い籠を用意してもらいました。
使用人達は喜んで用意してくれました。
王太子ばかりでなく、王族全てに恨みや憎しみがあるのでしょう。
でも使用人達が後で罰せられないように、脅してやらせた証拠として、王城の一部を破壊しておきます。
あまりに簡単に短時間で王太子を叩きのめせたので、王城で手に入れたドレスを背負い籠に入れて移動しようとしました。
ですが、使用人の一人がさりげなく目配せしてくれました。
彼女の視線の後を追うと、立派な衣装箱が幾つも置いてありました。
「他にも衣装箱はあるのですか?
あるのなら正直に教えなさい。
教えないと王太子や王族を殺しますよ!」
「はい、はい、はい。
王太子殿下に何かあっては大変です。
教えさせていただきます」
完全な芝居ですが、言い訳ができるようにするには仕方ありません。
彼女はさらに多くのドレスや武具がある場所も教えてくれました。
これで無理にコヴェントリー侯爵家だけから手に入れる必要がなくなりました。
アウロラが使うドレスが虫に食われないように、下着が不潔にならないように、使用人の女性を脅した芝居をして、キッチリと閉まる衣装箱にドレスと下着を詰めてもらいました。
コヴェントリー侯爵家の屋敷に戻る前に、王城と隠れ家の洞窟を衣装箱を背負って四度往復しました。
衣装や下着だけでなく、ハムとベーコン、チーズとウィンナー、塩や調味料も衣装箱に入れて運びました。
不味くはありませんが、できればもう蝙蝠をアウロラに食べさせるような、下品なことはしたくなかったのです。
私は装備した兜の上から、鍋や釜をかぶりました。
アウロラを御姫様抱っこしているので、両手がふさがっているのです。
背中には大きな衣装箱を二つも括り付けて背負っています。
頭に被れるものは、人目を気にせず被るしかありません。
「ヴァルナ様がこんな剽軽な格好をされるとは思いませんでした」
「私もこんな格好をすることになるなんて、今の今まで思ってもいませんでした」
私が御姫様抱っこしているアウロラも、アウロラを御姫様抱っこしている私も、昨日までこんな状況になるとは想像もしていませんでした。
あまりに珍妙な姿に、状況も忘れて大笑いしてしまいました。
笑うことで先の見えない将来を悲観しなくてすみます。
笑うことは大切ですね。
アウロラと二人なら、何とでもなると思えます。
アウロラもそう思ってくれていればいいのですが……
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