第6話

 私はアウロラを御姫様抱っこして王都に戻りました。

 隠していた怪力、筋力を惜しみなく使い、魔羚羊のように跳んで戻りました。

 そしてコヴェントリー侯爵の王都屋敷を襲撃しました。

 並の城と変わらないような厳重堅固な屋敷です。

 本館の周りを側防塔と櫓を備えた城壁が二重に囲んでいます。

 王家直属の騎士団や兵団が攻め寄せてきても、直ぐには落とせない屋敷です。


 ですが私には無意味な城壁です。

 十メートルや二十メートルの城壁など、一気に跳び越えてやります。

 そして本館の正面扉を粉砕して中に入ってからは、出会う使用人をぶちのめしてコヴェントリー侯爵とダニエラの居場所を聞き出しました。


「さっさと着替えを持ってきなさい。

 二人は殺さないわよ。

 左手を握り潰すだけよ。

 下手に逆らえば後で厳しいお叱りを受けるわよ。

 この二人がどれだけ身勝手で残虐なのかはあなた達が一番知っているでしょ」


 私はコヴェントリー侯爵とダニエラを人質にして、使用人にアウロラと私の着替えを用意させました。

 私は騎士や兵士が使う動きやすい戦闘服と装備を要求しましたが、アウロラのためにはケッペル伯爵家の令嬢に相応しいドレスを用意させました。

 強欲で身勝手なダニエラが集めたドレスが山のようにあったので、直ぐに持ってこさせることができました。


「侯爵閣下とダニエラ様を助け出せ!」


 本館内にいた騎士や兵士はすべて手足の骨を叩き折って、抵抗できないようにしたのですが、城壁や側防塔、櫓に詰めていた騎士や兵士が、コヴェントリー侯爵とダニエラを助けようと本館に殺到してきました。


「悪足掻きが裏目に出るわね。

 帰る直前に手を握り潰す心算だったけど、逃げられないように膝を潰しておくわ」


 殺到する騎士と兵士を迎撃するために私が玄関に行くと、一人になったアウロラが心配ですし、コヴェントリー侯爵とダニエラを逃がてしまったら、怒りが限界を超えて二人を殺してしまうかもしれません。

 そこで二人の膝を粉々に握り潰して、一歩も歩けないようにしました。

 そのうえで鎧戸を閉め、扉にも鍵をかけて、逃げ出せないように閉じ込めました。

 そこまでしてもやっぱり心配で、結局アウロラを伴って迎撃に向かいました。

 アウロラには眼をつむり耳をふさいでもらい、私が騎士や兵士を虐殺する現場は見ないようにしてもらいました。


 もう誰も本館に助けに来ないのを確認して、人間では絶対に持ち運びできない巨大な庭石を軽々と玄関前に置いて、誰も出入りできないようにしました。

 そのまでやって、コヴェントリー侯爵家の使用人にアウロラの御世話をさせて、身体と髪を洗わせたり、髪の手入れをさせたりしました。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る