第5話
私は真剣に悩みました。
アウロラを連れて行くべきか残しておくべきか?
洞窟に残しておいても、私の気配が残っているので、獣も魔獣も洞窟には入ってこないはずです。
ですが、鈍感で馬鹿な人間は入ってきます。
暗く深い森の奥深くに、深夜に入り込む人間などいないとは思いますが、世の中絶対はありません。
それに一番心配なのは、アウロラの不安と恐怖です。
気丈に振る舞ってくれていますが、アウロラは普通の貴族令嬢です。
正義感と勇気は賞賛に値しますが、初めて来た暗く深い森の奥にある洞窟に一人残されて、正常な判断や行動ができるとは思えません。
風の音や獣の鳴き声に正気を失い、森の中に駆けだしてしまうかもしれないのです。
ですが、私が報復に行く王宮に連れて行くのも考えものです。
怒りに人を捨てた私の報復は、鬼畜で残虐な行為です。
それを見たアウロラの心を壊してしまうかもしれません。
いえ、それは嘘です。
アウロラの事よりも、自分の欲望と願望のためです。
アウロラに怖がられたくない。
アウロラに嫌われたくない。
アウロラに化け物を見るような視線を向けられたくない。
私の心にあるのはそれだけです。
「ヴァルナ様、私の事は心配なさらないでください。
ヴァルナ様の足手まといにはなりません。
ヴァルナ様がここで待てと仰られるのなら、いつまでもここでお待ちします。
ヴァルナ様が付いてこいと仰られるのなら、地の果てまでついてまいります」
可愛い!
アウロラは可愛すぎます!
私が男なら、この場で求婚して押し倒しています!
人を捨てた私の救いがアウロラです!
「ありがとう、アウロラ。
ここに一人残して行くのは心配で耐えられない。
残虐な行為を見せてしまうと思うが、ついて来て欲しい」
「心配してくださってありがとうございます。
でも大丈夫ですよ。
私も武闘派貴族の娘です。
いざという時の覚悟はできております。
どうか安心して御連れください」
可愛すぎて鼻血が出てしまいそうです!
アウロラのためなら何だってします!
可愛いアウロラに何時までも同じドレスを着させるわけにはいきません。
下着は毎日変えられるようにしなければいけません。
どうすべきか?
王族を皆殺しにして王宮を占拠してしまいましょうか?
ですがそれでは長く恐怖を与えた上で殺すという宣言に反します。
そうだ!
いい事を思いつきました!
これならもっと恐怖を与えながら、アウロラに不自由をさせないですみます。
「一緒に王宮に行ってもらいます、アウロラ」
「はい!
どこまでも御一緒させて頂きます」
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