第816話 反撃開始!!

「ふうっ……良かった、成功した」

「な、何だお前は……いや、その顔!?まさかお前がっ……」



ガロウはレナの顔を見て驚き、配下から報告を受けていたがイレイナの顔と本当に瓜二つであった。突如として空から現れ、瞬く間に戦車を一両破壊し、更には砲弾をも弾き返したレナの力にガロウは嫌な予感を覚えた。


レナは周囲の様子を観察し、倒れているエルフの戦士や魔人、他にカツ、ダンゾウ、イルミナの姿を見て怒りを抱く。全身から魔力を滲ませ、残り一両の戦車に視線を向ける。



「これは全部……お前等の仕業か!!」

「くっ!?お、おい!!早く次の砲弾を撃て!!」

「は、はい!!装弾準備……」

「させませんわぁっ!!」



砲弾を再び発射しようとする戦車の上空から声が響き、その場の誰もが顔を見上げると、そこには天使の翼を想像させる「氷の羽根」を生やしたドリスの姿が存在した。彼女は地上へ向けて滑降すると、戦車の砲台に向けて腕を伸ばす。



螺旋氷弾ドリルガン!!」

「うわぁあああっ!?」

「うおおっ!?」



氷柱のように巨大な氷塊の砲弾が放たれ、砲口へと衝突すると戦車の砲台を破壊する。その光景を見てガロウや獣人兵は驚き、一方でドリスはレナの隣に降り立つ。



「もう、レナさん!!また勝手に一人で先に行って!!」

「ごめん、ドリスさん……でも、我慢出来なかったんだよ」

「仕方ありませんわね。では、ここからは共に戦いましょう!!」

「な、何だお前等は!?」



レナだけではなく、空を飛んできたドリスに対してガロウは焦りを抱き、地上に降りた二両の戦車は破壊された事で状況は一変した。ガロウは神器アックスを構えるが、それを見たイルミナが二人に注意する。



「気を付けて下さい!!その斧は魔法を吸収する仕掛けがあります、下手に魔法で攻撃すれば斧に魔力を奪われます!!それに伸縮自在に柄を伸ばす能力もあります!!」

「えっ!?」

「という事は……私達とは相性が悪いのですね」

「ちっ、余計な事を……」



イルミナの言葉を聞いてレナとドリスはガロウが所持している斧に視線を向け、迂闊に攻撃できない事を悟る。ガロウは能力の秘密をばらされてしまったが、すぐに自分の斧の特性を思い出す。


レナとドリスが魔法の使い手である以上は自分の優位は変わりはないと思ったガロウだったが、突然にガロウとレナ達の間に突風が発生し、一人の少女が姿を現す。その姿を見た瞬間、レナは驚きの声を上げる。



「コネコ!?」

「へへ、やっと追いついたぜ……ここはあたしに任せろ、兄ちゃん!!」

「な、何だ!?このガキは……」



コネコが姿を現すとガロウも戸惑い、いったい何処から現れたのかと考えるが、彼女はガロウに狙いを定めると正面から突っ込む。



「行くぞ、おっさん!!」

「何をっ……ふげぇっ!?」

『おおっ!!』



正面から凄まじい速度で突っ込んできたコネコはガロウの顔面に向けて膝蹴りを叩き込み、ガロウは全く反応できずに鼻血を噴き出す。さらにコネコは彼の肩を足場に利用して飛び上がると、顔面に今度は両足を叩きつけて地面に叩き込む。



「落脚!!」

「ぶほぉっ!?」

「しょ、将軍!?」



コネコの全体重を乗せた一撃によってガロウの頭部は地面に叩きつけられ、その光景を見た兵士達は信じられない表情を浮かべる。一方でコネコの方はこれで終わらせるつもりはなく、ガロウから離れると今度は円を描くように移動を行う。



「猫さん、こちら、手の鳴る方へ!!」

「く、くそっ……舐めやがってっ!!」



明らかに挑発を行うコネコに対してガロウは起き上がり、手にした斧を振り回す。しかし、高速移動を行うコネコには掠りもせず、それどころか彼の身体に次々と彼女の蹴りが叩き込まれる。



「どうしたどうした、その程度か!?」

「ぐはっ!?あぐっ!?がはぁっ!?」

「おおっ……また一段と早くなったな」

「へっ、流石は俺の弟子だ……」



反撃の暇すら与えずにコネコは蹴りを繰り出し、超高速で叩き込まれる蹴り足によってガロウは鼻血だけではなく、身体のあちこちに痣が生まれる。その様子を見ていたダンゾウは感心した声を上げ、カツは鼻を鳴らす。


だが、攻撃を開始してから時間が経過すると、流石にコネコも疲れてきたのか目に見えて速度が落ちてきた。一方でガロウの方は損傷は負ったが、それでも諦めずに斧を振り続ける。



「はあっ、はっ……くそ、いい加減にしつこいんだよ!?」

「調子に乗るな、このガキがっ!!」

「何だとっ……あうっ!?」

「コネコさん!?危ない!!」

「止めろっ!!」



コネコは足元の小石に足を引っかけて転んでしまい、それに対してガロウは斧を振り落とそうとする。それを見たドリスとレナが動こうとしたが、その前にコネコの元に駆けつける影があり、ガロウが振り落とした斧の前に立つ。



「回し受け!!」

「うおっ!?」

「うわっ!?」



上段から振り落とされた斧に対し、コネコの前に立った人物は腕を回転させて攻撃の軌道を逸らす。その光景を見たレナ達はすぐにコネコを庇った人物の正体がナオだと悟る。

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